風のがっこう便り2020年

2020年12月7日  ケンジ ステファン スズキ

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「風のがっこう」を創立したのが19976月です。今年はコロナ感染問題の関係で研修をキャンセルしたこともあり、始めて研修生ゼロの年となりました。コロナ感染問題が何時収束されるか解りませんが、「風のがっこう」の研修は暫く休むことになると思っています。

 

  デンマークのコロナ感染問題について

世界中でコロナ感染問題が起こっている中、デンマークもコロナ感染を防ぐため多くの施策を採っています。特にミンクの毛皮の生産国として世界最大の規模を持つデンマークで、ミンクがコロナに感染しミンクの感染によって新たなコロナウイルス(デンマークではクラスター5と呼ぶ)が発見され、世界の医療機関で開発が急がれているコロナ予防ワクチンはこのクラスターウイルスには効力が無いかもしれないという懸念から、114日デンマーク政府は全てのミンクを殺処分することを決めました。デンマークのミンク肥育農家数1,137戸あり、肥育しているミンクの数は1500万~1700万匹と言われ, デンマークの 輸出品目の一つになっています。今年の7月に北ユトランド地方のミンク農家でコロナ感染が発覚し、政府は監視体制を強め、予防にあたっていたのですが、秋に入り急速な勢いで感染が拡大しているため、感染が確認されたミンク農家のミンクを全部殺処分し、感染が確認された農家から7.8キロメートル周辺のミンクも全て殺処分にしてきました。その数は2020114日報道によりますと、コロナ感染が確認された農家数は270戸、この内67戸の農家のミンクは殺処分済み、またミンクのコロナ感染の可能性がある農家数は23戸となっていると伝えていました。デンマーク政府によりますと、デンマークは2022年までにミンクの生産を取止めることを提案しています。一方ミンク生産業界の就労者数は約6000人といわれ(内ミンク農家の雇用3,000人)、仕事を失った人たちの雇用に関し地方行政と労働組合は新たな職場の確保や教育の道を模索する業務に取り組み始めていることと、また生産停止したことによるミンク農家への補償について国から幾らの補償金が出るのか、業界関係者は見守っている所です。デンマークのミンク産業に関し追って報告します。

 

デンマーク政府・議会はコロナ感染防止対策として、集会の制限、レストランや飲食店の開店時間を制限し、国内の移動にも色々な制限をし、また、国外旅行も制限にしています。そのことでホテル、飲食店、旅行会社などに勤務していた人たちが職を失っています。そのような人たちには国からの支援をしています。その一方で消費促進策として学生や年金所得者220万人への助成金として一人当たり無課税の1,000クローネ(約1万8千円)を払い込み,また雇用促進策として住宅の断熱、窓やドアーの取り換えなど、省エネ策を採った人たちが業者に払った人件費を所得税から控除できるような制度を採り入れました。何れにせよ、コロナ感染問題による国家(国民)経済への計りしれない影響にたいし、国を統治する人たちはどうような手段を採り、国民生活を守るのか、期待しまた見守っていきたいと思っています。

 

  気候変動への対策 

デンマークで気温を測定し始めたのは1873 年ですが、気温の推移をみますと図1で見る通りで徐々に気温が上がっていることが解ります。図表への解説によりますと、1873年から1900 年のデンマークの年間平均気温は7度でした。それが1900年から2017年の平均気温では8.5度になり、1873年から2017年までの間に1.5度上昇したと解説しています。気温の変化を見ますと1873年から2017年の平均気温9度以上の年が13回ありましたが、この内の11回は1989年以降であると発表されています。気温が上昇したことでデンマークの雨量も増えています。デンマークの年間平均雨量は1870年代の650㎜から近年は750㎜と約15%増え、特に集中豪雨の回数が増えています。そんなことから、平坦なデンマークでは水害対策を採ると共に、汚水と雨水を分けて処理するための工事が各地で行われています。それに平行し地域暖房用の配管も最新断熱パイプに取り換えています。なお、デンマークの地域暖房の仕組みについてはHPに掲載しています。クリックすると移動します。

(図1)黄色のグラフ:デンマークの1870年から2020年までの平均気温推移。緑線:ガウス係数 (ドイツ数学者Gaussが見出した計算方式)

   

(左図)集中豪雨対策として雨水を汚水と分けて処理するため、新たに雨水用の配管を埋める作業。

(右図)雨水用配管工事と合わせ、最新の地域暖房用の温水パイプの取り換え工事、パイプの耐用年数は50年と言われている

 

デンマークの平均気温が上昇したことによって、牛の餌として使用するトウモロコシの生産が急速に伸びています。トウモロコシの作付け面積は2000年の61,000ha.でしたが、2015178,000 ha.に増え、2019年には186,000 haとさらに増えました。デンマークの家畜農家は国外からの家畜用の餌の購入量を減らしことに努めていることもあり、例えば2019年におけるデンマークの家畜飼料の自給率は78%となっています。また、デンマークの食糧品の約75%は輸出され、食糧品の貿易収支はデンマークの大幅な出超*となっています。

*(2017)輸出額約1,660 億クローネ、輸入額約720億クローネ よって出超940億クローネ、また、対日輸出でデンマークの出超が多いのは肉類と酪農製品そして医薬品が多いためです。因みに2017年デンマークの商品輸出総額(約7460億クローネ**)の約22%が食糧品となっています。

**同年における用役輸出を含めたデンマーク輸出総額は約1.2兆クローネとなっています。

 

図2.上青線:対日輸出額推移

   下緑線:対日輸入額推移    右図輸入品目:機械及び運輸機器

  単位:10億クローネ    輸出品目(2018年):医薬品、肉及び肉製

               品、酪農製品。デンマークの対日輸出額の

              伸びと、輸入額が減っていることが解ります。

 

③  デンマークの風力発電産業について

デンマークの電力消費量に占める風力発電量の割合は下記図3.で見る通りその年によって上下していますが2019年の数値では約47%となっています。デンマークのエネルギー政策では2020年における電力消費量の50%を風力発電で賄う目標をたて、近年特に洋上ウインドファーム建設に取り組んでいます。図4はデンマークの風力発電の売電価格(年間平均)の推移ですが、2019年のキロワット時当たりの売電平均価格は約26オーレ(約4.7円)となっています。

図3.電力消費量に対する風力発電量の占める割合推移

 図4.風力発電のキロワット時当たりの売電価格推移

      単位:オーレ/kWh

 

デンマークの風車発電は陸内から洋上へと移行する中2012年デンマーク政府は主に洋上用の大型風車のテストセンターを開設し、工科大学と協力し試作品のテストをしています。

砂丘地に建つ大型風車の試作品

 

デンマークは201210月大型風力発電機の試験場(Østerild)を開設しました。試験場の場所はユトランド半島西北部の強風地帯で地上100メートルの

平均風速は約8m/s.と言われ,テストできる風車の羽の突端までの高さは最大250メールとなっています。管理はデンマークの工科大学風力エネルギー学部です。同センターでは9基の風車の実証試験が出来るようになっており、202011月現在 8 基の風車の実証試験が行われています。

内訳(単位 MW):①GE.0 、②Vestas5.6MHI/Vestas9.5 Vestas4.2 ⑤MHI/Vestas 3.0 SG*8.0SG 7.0、⑧SG 11.0、⑨ GE 予約済み。*SG=Siemens Gamesa

 

ナセル高さ11m、幅8m、運搬車を含めた重量605トン

風力発電機の試験場に向け、時速3.5キロ程度で運搬されているMHI/Vestas風車のナセル。MHI/Vestas の創立は2014年、三菱重工とベスタス社がそれぞれ1億ユーロを出資し洋上ウインドファーム用の風車の製造販売を目的として創業。従業員数約2700人。202010Vestas社はMHI分をVestas社株2.5*を譲渡し買い取った。

*金額にして約53億クローネ(約千億円)。2019年におけるVestas社の売上高約900億クローネ(約1.6兆円)。

Vestas社と三菱重工との間で創業したMHI/Vestasは全て洋上ウインドファーム用の風車の製造販売を目的として設立された会社で、創業当初における従業員数は約300人と見込んでいました。その後、欧州海域での洋上ウインドファームの建設が多くなり、デンマークに所在する、ドイツのシーメンス社(Simens)とスペイン(Gamesa)の合併会社シーメンス・ガメサと共に欧州の洋上ウインドファーム用の風車のほぼ100%製造し販売してきました。そんなこともあり、MHI/Vestasの従業員数は約2,700人と急増し、会計年度4年頃から利益が出る会社となっていました*。それだけに202010月、三菱重工が洋上ウインドファーム用の風力発電機の製造から降りたことは残念に思っています。何故ならば、今後世界中において洋上ウインドファーム建設が増える中**で、この部門における技術開発をとおした雇用の増大などが見込まれると思うからです。この中には大型風車を移動するためのクレーン車の開発や運輸機器の開発、道路や系統連系の整備と補強他、洋上ウインドファーム建設に伴う各種のノウハウなど、この部門における専門的知識を得た人たちの業務が増えると思っているためです。

* 「風のがっこう便り2019年参照」、**例:スコットランドの洋上ウインドファーム用としてV164-10MW114基受注(計1.14GW)の他にEU2050年までに洋上ウインドファーム300GW3億kW)の導入計画を立てた。

デンマークでは約160種類のエンジニア職に就くための教育をしています。

例:・電気エネルギー技術エンジニア(高圧)

  ・エレクトロエンジニア(低圧)

  ・製造エンジニア

  ・機械エンジニア

  ・プロセスエンジニア

  ・交通・運輸エンジニア

  ・輸出エンジニア

  ・ソフトウェアエンジニア

 

移動車両の長さ55m。運搬車の牽引力2,000馬力

テストセンターに搬送されるタワーの一部(50m)重量275トン

上記写真で見る通り、大型風車の製造と運搬にはそれぞれのエンジニア教育を受けた人たちが携わっていますが、デンマークのエンジニアが加入する労働組合のメンバー数は約13万人、それでも2025年には約1万人のエンジニアが不足していると語られ, 政府議会はエンジニアの養成に力を入れています*。デンマークのエンジニア不足は国外からエンジニアの雇用を生みその数は約6,000人と言われています。エンジニア不足は結果として給料(報酬)の上昇を招いています。2019127日、デンマークエンジニア組合の発表によりますと、デンマークのエンジニアの平均月額給料は税込みで47,189 クローネで**、デンマークの就労者の平均月額27,226クローネに対し73%高くなっていると語られ、毎年エンジニアの給料は伸びていると語られています。

*2020年各種エンジニア学部に進学した学生数は約7,000, **円換算年収税込み約1千万円。

デンマークの政府議会及び産業界はエンジニア不足の解消に努める背景には、風力発電産業、バイオガス、廃棄物のコージェネ発電、地域暖房事業団、農業部門など全て業界において高度な技術教育を受けた人材が必要になっているためです。因みに2019年における持続可能な開発目標(SDGs)の達成ランキングでデンマークは世界のトップ*になっています。また世界の約7300社の中で持続可能な企業100社の中にデンマークの企業は5社入っています**。これもデンマークの人たちは時代の流れを見ながら国民の教育を替え新たな産業を育成して得た結果だと思えます。

* 2019年のSDGs 達成ランキング①デンマーク、②スウエーデン③フィンランド・・・・⑮日本

** 2020版「Corporate Knights Global 100-index」① ØrstedChr,Hansen Holding ⑥Novozymes, 37Vestas Wind System, 71: Novo Nordisk

 

洋上ウインドファームの建設と海底ケーブル作業。

デンマークが国内外で洋上ウインドファーム設置工事が出来ているのは、この種の工事が出来るエンジニアを養成しているためだと思っています。

 

 

④  デンマークに投資する国外企業

国外企業のデンマークへの投資に関しましては「風のがっこう便り2019年」で触れましたが、各国からの投資が続いています。国外企業は何故デンマークに投資するか、その理由として政治が安定していること、汚職が少ないこと、株主の権利が守られていること、企業会計に透明性があることなどがあげられています。またデンマークの電力の供給においては、過去10年間の平均停電時間は年約20分で、供給率99.99%以上と安定していること、電力料金は安いこと、再生可能エネルギー資源による電力供給の割合が多いこと、将来に向けた電力網の整備に大きな投資を見込んでいること*などがあげられると思っています。

*2030年における生活水準を2020年レベルに維持するため電力網の整備として約290億クローネ(約5,200 億円)投資する見込む他、政府議会の電気自動車の導入策による電力網への整備費、現在埋めてある送電・配電線16,000kmの取り換え費用なども検討している。(デンマークで停電が少ないのは配電線(10kV)の殆ど土中埋め、デンマークのどこの町や農家を見ても電信柱を見ることが出来ないのはそのためです。)

201982日富士フイルムはデンマークのBiogen社を買収したと発表しました。買収したデンマークの会社名は「Biogen Manufacturing ApS」で同社ではリューマチ患者、動脈硬化症の患者、アルツハイマー病患者への治療機器などを製造していると言われています。従業員数は800人の会社で買収額は8億9千万ドル(約1,000億円)と言われています。同社の売上高は14億クローネ(約250億円)税引後利益17100万クローネと発表されていました。同社の運営管理は「FUJIFILM Diosynth Biotechnologies」で、202069日、事業の拡大を図るため61億クローネ(約1,000 億円)を投資することを決め、これによって新たに300人の雇用を見込むと発表しました。このことで富士フイルムはこの2ヵ年の間にデンマークに約2000億円相当の投資をすることになったわけですが、これだけのお金を投資しても、利益が出ると見込んでの投資と思いますが、何故日本国内に投資しないのか、投資に見合物件がないのかなど、思案しています。

 

デンマークの学校教育では「授業料」が無く、教育費は国が負担し、学生の生活費も国が負担しています。それだけに、投資した教育費に対し納税者はどれだけの成果を生んでいるのか知る権利があります。そのことがあってかもしれませんが「コペンハーゲン大学の起業家*」という報告書が出ました。* Iværkssætteri på Københavns universitet.

 

コペンハーゲン大学に就学している学生数は約42,000(内訳:学士22,000,修士 17,000, 博士3,000)、教授数約4,500人職員数約4,500人、大学の運営費は国庫負担で2019年の予算額は89億クローネ(約1,700億円)となっています(ウイキペディア情報)。そしてコペンハーゲ大学卒業生の社会への貢献度について、同大学卒業生の起業家データでは、2001年~2016年の16年間に年間平均290件の起業にあたる4,637の事業を立ち上げたと書いていました。そしてこれら起業家による国内への経済貢献は2016年で見ると280億クローネ(約4,500億円)となり、このことで新たに75,000人の雇用を生んだと報告していました。コペンハーゲン大学卒業生の国内経済への貢献額が年約280億クローネに対し、国から出資額が89億クローネであるので、国から見たコペンハーゲン大学への投資利回りは約3.1倍(280/89=3.14)になり、国にとっては良い投資になっていると思います。

 

日本でも国が大学教育に運営交付金という名目で支援しており、2004年大学の民営化が導入された結果、大学への運営交付金は毎年削減されていると聞こえていますが、その中で運営交付金が最も多いのは東京大学で、2016年のデータによりますと、学生数約1万4千人、大学院生約1万3千人に対し、国からの運営交付金額が約800億円となっていました。東京大学卒業生の社会経済への貢献度を調べてみましたが見つかりませんでした。

 

既に触れましたが202010月三菱重工(株)は洋上ウインドファーム用の大型風車の製造から撤退したことを決めた様子で、残念に思っています。筆者が1991年からデンマークの風力発電機を日本に輸出するための業務に入り、その当時、日本の風力発電機市場では三菱重工*と競合しながら活動を続けていました。この中には筆者の生家、岩手県の東山町の束稲山に風車を建てることになり、三菱重工の風車とミーコン社(筆者)の風車が競合し、結局三菱重工の風車が建ったわけですが、その後約30年の間にミーコン社はべスタス社となり、世界最大風力発電機メーカとして成長し、現在約25,000人を雇用する企業に成長しました。日本の教育とデンマークの教育の違いがこの結果を生んだように思えます。何故ならばデンマークの教育では世界の流れを見ながらどのような企業が必要かそれに合わせた人材の育成を、国と学校と企業が一緒になって進め新たな企業を生み出している。その例が上記で記述した、風力発電機のテストセンターです。国が農地としては適さない砂丘の中に風力発電機のテストセンターを作り、その管理は工科大学の風力発電機学科が担当し、そこに風車のメーカーがプロットタイプ(試作品)の風車を建て、実証試験をしそれを商業化することで新たな雇用につなげるという国策です。例えば風車産業の雇用者数は設備GW(百万キロワット)当たり9,000人の雇用を生むと言われています。 

* 三菱重工業は1982年頃から長崎造船所で風力発電機を生産し販売して来た。

 

⑤ 国外投資についての私見

5.日本企業の内部留保金推移     図6.日本の非正規雇用者数推移

5で見る通り日本企業の内部留保金額が増え続け2018年には463兆円で2011年の281兆円に比べ182兆円増えています。企業の内部留保金が増えた一方で図6で見る通り非正規で働く人たちが増え、その割合は2019年の数値で見ますと38.3%となっています。細かい数値の分析はしませんが、企業の内部留保金の増額の裏に、企業は人件費を抑えてお金を貯めていることが言えると思います。日本を代表する最優良企業であるトヨタ自動車の業績をみますと、2019年売上高30兆円、純利益2.25兆円となっていました。同社の利益率の推移では20193月期、8.2%、20188.2%、20177.2%と物作りのメーカーとしては高い利益率を上げていると思います。一方トヨタ自動車の従業員数は正規約365,000人、非正規約86,000人で、よって全従業員に占める非正規従業員の占める割合は約19.1%と計算しました。

トヨタ自動車で正規で働く人たちの平均給与額年約880万円と言われています。同社で働く非正規の人たちの給与額は幾らか調べかねています。推察するにトヨタ自動車の高い利益率の裏には非正規で働く約20%%に当たる人たちが貢献しているように思えます()が間違いだろうか。

:日本の正規就労者の平均年収額、(男性)約560万円、(女性)386万円、

   非正規就労者の平均年収額 (男性)約236万円、(女性)約154万円

 

非正規の雇用者数を増やし人件費を押さえることは企業にとっては、プラスになるとしても国にとっては所得税や消費税が減るためマイナスとなります。また、不安定な雇用条件で働く非正規の就労者に国や行政は何等かの形で支援をする必要が出るため歳出が増え、その結果として地方や国の財政に負担がかかります。

 

日本企業の国外への投資は日本の就労者にはプラスにならない投資です。一方日本企業のデンマークへの投資はデンマークの雇用増やし、それによって所得税や消費税の増税につながります。つまりデンマークにとっては、日本(国外)からの投資は国家にとって良い収入源になっているのです。例えば、三菱べスタス社の本社があるオーフス市にとっては従業員の所得税が増え、消費税も増えるので市の財政が豊かになるということです。

 

図7.日本の国の財政状態

非正規の雇用者数の増大と合わせ税収入の伸び悩みが在ると思います。

一方歳出は確実に増え、国債の発行高は減らないでいます。

 

図8.公開されているインターネット情報

2020年世界中においてコロナ感染が発生し、人や物の移動が難しくなっています。その結果として日本では職を失った人たちも増え、自殺者や家庭内暴力が増えていると聞え、また日本の65歳以上の人たちの約90%は将来の生活に「不安」を感じているという記事を読んだことがありました。

 

筆者はデンマークに居住して53年が過ぎ、この間デンマーク人と国について見聞し知ることに努めて来ました。この中でデンマーク人の無条件に「困っている人や貧しい人を救済する」国民性は何時の時代からどうして出来たのか、デンマーク人では学校間、職場などの間には競争は無く「皆で生きる」社会を築いて来ている、ことを知りました。その結果の一つとして、国外からの投資を受ける国を創り、そのことで雇用を確保し、国家財政を支え、それを基に国民生活を支援しています。その例として全人口の約20%に当たる約111万 人が国民年金生活者で国から支給される年金で生活が出来、学生は「生活費」を得て就学しています。

デンマークでは国の政策として中学生を対象に国内外で発信されている「情報」が「正しい」か「嘘」かを語り合う時間を作っています。その担当は国営テレビ局です。この制度は2015年から始め、2020年も中学2年生約2万人が参加したと語られ、今までに約10万人の中学生が参加した、と語られています。また、デンマークでは中学生の国政への模擬選挙を導入していますが、これら施策導入策の目的は次世代を担う、子どもたちに国内外の状況を把握して貰い、政治を変え持続可能な社会を構築するための知恵を見出して貰うための手段だと思っています。

日本の国を外から見ていますが、デンマークの「共に生きる」社会に対し、日本社会は「競争」社会がますます進行しているような気がします。何故日本人同士競争し合うのか、正規と非正規の労働条件の違いが何故生まれているのか、国民の生活不安に対し政治や行政はどうしようとしていのかなど、色々な課題が見えます。これらの結果として、財政難が生れ不安な社会が出来ているのだとすれば、改善するための努力の一つとして、日本人同士が守り合う社会を創ることだと思います。その為には、子どもに競争することを教えず、「共に生きる」ことを教えることが大事だと思います。何故ならば、競争という言葉には「勝ちと負け」がありますが、全て努力したからと言って勝てるわけではないし、「勝った」人でも「負けた人」と一緒に生活を共にせざる得ないと思っているためです。 非正規で働く低所得者の人達が増えれば増えるほど、「不安」な社会から抜け出すことは出来ないと思っています。理由は低所得者が増えると結婚し子どもを育てる人が少なくなり結果として人口が減ります。生産人口が少なくなる一方で日本でも高齢化が進み*その人たちの生活を支える人口が少なくなるため、「どうして生活を維持するか」という不安で生きる人たちが増えると思うからです。 

*日本の総人口に占める65歳以上の人口数の割合は28.7% (2020)でデンマークの約19.3(但し2018年数値)に比べて多い。         (了)

 

今年2020も多くの人たちにお世話になりました。

下記講演会を開催して頂きました関係者の方々に心からお礼申し上げます。

  202039日(月)京丹後市大宮町での講演:テーマ「世界一幸せな国、デンマークから学ぶ」―京丹後市の未来の道― 

  2020311日(水)滋賀県高島市での講演:テーマ「デンマークの廃棄物処理制度について」―デンマークのゴミ処理から学ぶ―

寄稿原稿掲載へのお礼としまして、雑誌『日本の科学者』3月号のレビュー

として「市民参加を義務つけたデンマークの風力発電導入政策とその国情」を

掲載して頂き、また同誌9月号にコラムとして「デンマークの地球温暖化防災

対策について」―気候法と現状―、を掲載させて頂きましたが、編集担当の長野八久氏他関係者の皆さまに心からお礼申し上げます。

Zoom インタビューと発表会企画へのお礼としましては、926日「デンマークの幸せについて」のZoom インタビューを企画して頂いた北畑純也氏に心からお礼申し上げます。また、125日第23回総合学術研究集会、D1分科会で「デンマークにおける地域温水供給システムについて」Zoom で発表する機会を作って頂きました河野仁先生はじめ関係者の皆さまに心からお礼申し上げます。

 

さらに、今年も福井富久子さんには、日本語のチェックと校正をお願いし、また、ホームページの運営管理をして頂きましたが、改めて心からお礼申し上げます。

では、コロナ感染に罹らないようお互い注意し2020年を送り、2021年どんな年になるか、楽しみにし(仮に困難な年になろうとも)迎えたいと思っています。新年もよろしくお願いします。

      

                     Kenji Stefan Suzuki

                    Hovedgaden 286973 Ørnhøj

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