世界で最も幸せな高齢者デンマーク人(20240407)

国連が発表している世界の幸福度指数(ワールド・ハピネス・レポート)によりますと2024年、143か国中で最も幸せな国民はフィンランド人、二番目がデンマーク人と評価されました(参考:日本人は51番目)。

今回初めて60歳以上の人口の幸福度についての評価もあり、デンマークの高齢者は143国中で最も幸せな国民として評価されました。デンマークの高齢者が何故幸せか、筆者の周りに住む高齢者の日常生活の見聞を基にデンマークの高齢者の幸せについて、記述します。

まず最初に「幸せ」とは何か、金銭面の心配は無く日常生活に満ち足りていること(読者は異論があると思いますが)と定義したいと思いす。まず、生きていく上で必要なお金について、デンマークの平均的高齢者はお金に心配はしていないことです。今日(2024年)デンマークの国民年金取得者年齢は66.5歳からですが、国から支給される国民年金で生活が出来るためです。2024年3月現在国民年金所得者は人口比の18.6%に当たる約111万人です。この人たちに国から毎月国民年金が支給されます。支給額は単身者と夫婦及び同居者に分かれていますが、以下の通りです。

 

表1.2024年3月現在、デンマークの国民年金支給月額

  (国民年金取得者年齢66.5歳以上の男女)

 

単身

夫婦又は同居者

国民年金基本額

6,928kr.

6,928kr.

年金手当

8,016 kr.

4,102kr.

税込み計

14,944kr.

11,030kr.

夫婦又は同居者世帯税込み計

 

22,060kr.

納税額

5,096kr.

7,500kr.

納税後の支給額 (注)

9,848kr.

14,560kr.

            (注)1kr=21.92円

表1で見る通り、毎月受け取れる国民年金額は単身で約9,800クローネ(約21万5千円)夫婦及び結婚してないが同居者の場合は各自に約7,200クローネ支給され、二人合わせると約14,560クローネ(約32万円)になります。国民年金額は物価に合わせ調整され、2024年は2023年に比べ税込みで3.5%増額されました。国民年金の他に在職中に積み立てしていた年金(職種と積立額による支給額差がある)が加算されされますので、国民年金は最低の年金額と言えます。また2024年における資産総額(額は毎年調整される)が99,200クローネ以下の年金者には国から高齢者小切手と呼ばれている手当が年1度支給されます。2024年に支給されたこの額は税込みで19,900クローネです。この支給を受けてた年金所得者数は約30万人いますので、貯金や資産額が少ない年金所得者も数多くいるということです。その他、総所得に占める家賃の割合が11パーセントを越える年金所得者(年金所得者以外にも適用している)は申請することによって住宅助成金(boligydelse と呼ぶ)受けることが出来ます。2024年の住宅助成金の最高額は月4,563クローネとなっています。こういうことでごく普通の高齢者はお金の心配をせず生活することができています。それと国民全体に言えることですが、デンマークの高齢者は冬場でも寒くない住宅に住んでいることも幸せであることの理由になっているかも知れません。デンマークの住宅環境特に暖房の仕組みについて加筆します。

 

デンマークで暖房が必要な期間は、10月から4月と約半年あります。デンマークの人たちは1970年代のオイルショックによる石油の値上がりを教訓に住宅の省エネを進めてきました。現在、適用されている新築住宅への断熱基準は、床下断熱は40㎝、屋根裏断熱40㎝、断熱材を含めた外壁の厚さは最低43㎝と語られています。窓枠やドアー枠は木材または樹脂材を使い(アルミ材は熱の伝導が高いため使用していない)窓ガラスは2枚あるいは3枚ガラスを使いガラス間に気体の断熱剤を入れています。デンマークの住宅や建物の暖房はお湯を利用し、田舎の一軒家は別として各自で暖房することは止め、町全体にお湯を供給するための地域暖房会社を設立しています。筆者が住む部落も今から20年以上も前に地域暖房会社を設立し一般住宅や工場、学校などにお湯を供給しています。。創業当初における熱源は石油、天然ガスでしたが、温暖化防止策として今日では熱供給の95%を麦わら(主に冬場の熱源)と太陽熱(主に春から夏場の熱源)を利用して賄い、残りは天然ガスと灯油を燃やしています。地域暖房会社の運営管理はほぼ完全な自動管理で常勤の従業員は居ません。事業経営は非営利で利益が出た場合は熱代を下げ、赤字が出た場合は熱代を上げることにしています。こういうことでデンマークの住宅では石油ストーブや電気を使った暖房装置を採り入れていません。理由は、石油ストーブは室内の空気を汚すことと、二酸化炭素の排出があるためです(*)。電気を暖房に使うことは、おそらく、電気という動力として利用できるエネルギー源を、室内を温めるために利用するのはもったいないと思っているためかもしれません。(*) 例えば灯油1リットルの燃焼で出る二酸化炭素量は2.51㎏。

 

デンマークでは地域暖房からの熱供給以外に補助暖房用として薪ストーブを採り入れている家庭が約70万世帯あります。筆者も居間に薪ストーブを設置しています。筆者の場合地域暖房のお湯で室内温度を20℃にセットし(但し10m2の書斎は23℃に設定)、薪ストーブは短時間に居間と台所の温度を20℃以上に高めるために利用しています。そんなことから薪ストーブの煙突を含めた掃除は義務付けられ、年1回専門業者が掃除に訪れます。その費用は500クローネですが、固定資産税と共に市が徴収することになっています。地域暖房会社から供給されるお湯の温度は約70℃です。熱供給は当然のことながら断熱パイプを使い、歩道の下約80㎝に埋めています。断熱パイプにはお湯漏れを検出するためのセンサーを付けています。建物の暖房では床下やラジエターに70℃のお湯を流し、風呂場や台所で使うお湯は、地域暖房で供給される温水で、水道の水を温め利用しています。暖房と給湯費は各地域暖房会社によって異なりますが、デンマークの標準的住宅の面積130m2の年間熱量代金は7,500クローネから42,000クローネと言われており、安いのはコージェネ(熱電を同時に供給する発電所)から供給されている熱量です。筆者の住宅は平屋で面積130m2です。年間の暖房費と給湯費として地域暖房会社に払う金額はその年によって多少の変動がありますが2024年の概算請求額は約12,500クローネでこの額を10回に分けて払うことになっています。

本題に話を戻します。

 

デンマークの高齢者介護の責務は地方行政にあり、24時間の監視や介護が必要になった高齢者は介護施設に入居してもらうことにしています。地方自治体運営の介護施設が全国で約900か所あり他に民間運営の介護施設が約75か所あります。民間運営の介護施設への入居者の審査も地方行政の責務となっています。2023年における、介護施設の入居者数は全国で約4万人でこの数は65歳以上の人口の約3.6%と僅かです。地方行政にとって高齢者を介護施設に入居させると介護負担額が増えるため、行政は可能な限り高齢者が自宅に住まわせ、在宅介護で対応するという手段で選んでいます。デンマークの介護施設に入居した場合の費用について書きます。

 

筆者が住む近くに所在する民間運営の介護施設(注)の入居代を見ますと以下の通りです。全て月額料金です。

① 家賃:7,600クローネ 全室個室、寝室、居間、風呂場と洗面所面積約40m2で、光熱費込みの家賃、他に入居時の敷金(デポジット)として家賃の3か月分払います。

② 食費:4,100クローネです

③ 雑費:1,000クローネ (洗剤、シャンプー、その他の各自への消耗品調達料)

  計  12,700クローネ 

 

但し入居者全員が国から住宅手当を受けています。その額は一人当たり平均約3,000kr。と語られていますので、介護施設への支払額は毎月の国民年金額で賄える費用になっています。また、運営管理費への助成金として市(ヘアニング市)から入居者一人当たり一日約1,200クローネ支給されいます。地方自治体ら出る助成金額は自治体(全国で98市町村ある)によって異なり、一日当たり一人1,000クローネから1,700クローネと語られています。よって30人を収容している介護施設に支給される助成金額は一日当たり3万から5万1千クローネということになります。民間の介護施設への入居者の審査を自治体が行っているのは助成金を支給しているためでもあります。自治体の助成金は介護施設の職員の給与に充てられています。

 

デンマークの統計値によりますと、介護施設の居住者の平均年齢は81.4歳で、介護施設居住期間は平均すると約2.6カ月と語られています。つまり、デンマークの介護施設に住む人たちは高齢者でしかも健康を害し、自活が困難な人が殆どだと言えます。

 

(注)この介護施設は2011年まで市営でしたが、市が財政難を理由に閉鎖することを決めたため住民が買い取ることにしました。買い取り価格は当時のお金で約250万クローネ、内半分は住民が負担し(寄付)、残りは銀行から融資を受けました。ただ、住民が負担した額は所得税から控除できたため結果として住民の個人負担額はゼロになりました。

2012年に民営化となった介護施設の入居者の定員数は15名でしたが、その後2020年に拡張工事をし、今日の定員は31名となって居ます。介護施設が民営になり介護施設を支える市民が約300名いますが理事会を設け総会を開き運営管理へのサポートをしています。例えば会費を集め(年間の会費は単身で100クローネ、夫婦は150クローネ)その会費の中から入居者の誕生日や祝い事への経費に充て、建物のメンテ作業、庭の手入れなど、市民が無報酬で働いています。また、入居者の散歩の手伝い、余興の企画などもこの市民団体が行っています。その他、遠足用のバスも住民からの寄付で確保し、遠出する時のバスの運転手は市民のボランティアで賄っています。介護施設が民営となったため、入居者への食事の手配は市営の厨房からの配達ではなく、独自の家庭料理と代わり、食材は集落に一軒しかないスーパーマーケットが供給しています。そんなことで、介護施設が市営から民営になったことで入居者へのサービスが増え、町のスーパーマーケットの売上に繋げています。

 

筆者の例ですが、デンマークの国民年金所得者として暮らしています。健康管理を兼ね自宅から13㎞離れた町にある地域暖房のお湯を利用した温水プールに特別な用件が無い限り週3回通っています。国民年金所得者の利用時間は毎週月、水、金の午前8時から9時半と決めています。プールの半年間の利用料は600クローネです(その都度の利用料金もある)。つまり1か月当りにすると月100クローネです。筆者の場合月に12回ほど利用しているので1回あたりの利用料金は100クローネを12で割った約8.3クローネ、円で約180円という計算になります。温水プールが安く利用出来るのは地域暖房という仕組みがあるためだと思っています。また、デンマークの高齢者の多くは、何らかの病気や症状を持って暮らしています。筆者の場合は何年も前から血糖値が高いことを医師から指摘され、その血糖値を下げるための薬を飲んでいますが、その事もあり、3か月毎に血液検査を受けています。検査や往診料の個人負担が無く、その他目の検査は年に1回受け、こ

れも個人負担が無く、国の税金で賄っています。歯医者に関しては、国から少し補助が出ますが、ほぼ100%本人負担となっています。

 

国連の評価による、デンマークの高齢者が世界でもっと幸せな国民と呼ばれている理由についてその一部書きました。つまりデンマークのごく普通に生きる高齢者は、生活のためにお金の心配がなく、断熱が行き届いた住宅に住み、冬場の寒さに耐えることも無く、夏場の暑い日々に悩まされることもなく(建て物に断熱効果は暑さにも効果がある)暮らしています。このような生活が出来ている(た)背景には、長い歳月をかけ、国民と国家を先導する政治と行政のたゆみない努力の結果があると思えます。デンマークの高齢者の生活問題としとして語られている中に「孤独」があります。「孤独」は各個人の生活環境からでた問題であるだけに、政治や行政あるいは、他人が個人の孤独問題の解決に向けた方策を見出すことは難しいと筆者は見ています。子供も無く、孫もいない高齢者の中で「孤独」に陥いる可能性が多いのは、その人(達)が選択した生き方や生活過程の結果とも思えるためです。

 

デンマークの守られた国民生活は心の豊かさを生み、余暇は家族や友人・知人との飲み食いを通した交流、家族間の誕生日会あるいは国外旅行に繋げています。デンマークの家族の間でごく普通に行われている集まりは誕生日会です。筆者の場合は娘3人、その娘の夫3人それに孫6人いますので、最低でも年12回の誕生日会(筆者を含めると13回)あります。その他にクリスマス会やその他の祝い事を含めると家族との交流会は数多くあり、高齢者としての生きがいに繋げています。国連がデンマークの高齢者は世界で最も幸せな暮らしをしていると評価していますが、筆者はその事を実感して暮らしをしています。

 

筆者は1967年4月7日に(22歳の時)デンマークに入国し今年で57年目を迎えました。

 

2024年4月7日

デンマーク ウアンホイにて

ケンジ ステファン スズキ