風力発電の状況とデンマーク最大のバッテリー(ボーンホルム島)20190321

 

(1)風力発電

20191月末におけるデンマークの風力発電設備量は6264基で、発電設備は613万kW(6,130MW)となっています。デンマークの人口数は約580万人であることから、一人当たりの風力発電設備量は1kW以上になりました。2018年における風力発電機からの発電量は約161億kWh(キロワット時)で消費電力量342億kWhに対し、風力発電量の占める割合いが約47パーセントになっています。2020年におけるデンマーク政府が目標としている風力発電による電力供給の割合が、50パーセントということから見て、2020年までの残り1年で目標が達成できると私は見ています。デンマークの風力発電の増設に貢献しているのがべスタス社であり、また三菱重工業社とべスタス社の合併会社Mitsubishi/Vestas 社です。この中でベスタス社の2018年の業績をみますと次の通りです。 

 

2081年のおけるべスタス社の業績について:

 

売上高:101億ユーロ (1.27兆円)  売上高対しての利益率

 

  内;風力発電機 84.65億ユーロ  利益7.54億ユーロ 8.9%

 

   サービス契約 16. 69 億ユーロ    利益4.21 億ユーロ 25.2 %

 

 上記から、べスタス社の売上では風車のサービスでの利益率が、風車その物の販売よりも利益率が高くなっています。つまり、風車のサービスは良い儲けとなっていることが解ります。また、べスタス社の2018年会計年度末における、受注量は風車で119億ユーロそれに世界67カ国におけるサービス・メンテナンス料の受注額143億ユーロとなっています。

 

また2018年会計報告書によりますと、株主への配当総額は利益額の30%当たる3.53 億ユーロで、一株当たり配当額では7.44kr.( 126)となっています。

 

2018年三菱&べスタス社(Mitsubishi/Vestas 50%出資)の売上高は111200万ユーロ(約1,401億円)創業以来(2014年創業)初めての利益2,600万ユーロを計上しました。なお同社の受注量は3,838 MW(約384万kW)で、金額で幾らになるかは発表されていません。

 

風車の値段について、べスタスの会計報告書から試算しますと、2018年べスタス社が納品した風車の設備量は10,847MW、それの売上高は84.65億ユーロであることから、MW当たり78万ユーロと計算されます(8,465/10,847=0.7803)。つまり風車のキロワット当たりの値段は780ユーロで、日本円に換算しますと約98,280円となります。また風車の値段については、ドイツとスペインの合併会社Siemens-GamesaではMW当たり76万ユーロ、また元デンマークの風力発電機メーカーNordex, の風車においては、MW当たりの販売価格は74万ユーロになっています。このことから世界の風車本体の値段はキロワット当たり10万円を切ったことになります。

 

私が1992年に、最初のデンマークの風車として石川県の松任市に納品した100kWの風車の契約額が100万クローネだったことから見て*、この27年間の内に風車の値段がかなり安くなっていることが解ります。

 

*2019年円とクローネの換算レートは1クローネ約17円で、この当時の換算レートに比べ違いがあるものの1kW当たりの風車の契約額が17万円と試算されます。

(2) デンマーク最大のバッテリー(充電器) ボーンホルム島        

デンマークの島の一つに、バルト海に位置した人口約4万人が住む、面積588kの島ボーンホルム島(Bornholm)が在りますが、その島にデンマークの工科大学が、政府からの補助金1,900万クローネ(約3億円)を受け、デンマーク最大のバッテリーを設置することを決めました。プロジェクトの名称はBOSS (Bornholm Smartgrid Secured-by grid connected battery system) と呼ばれています。

バッテリーシステムの建設総額は3千万クローネ(約5.5億円)ですが、その内の1,900万クローネが政府からの助成金です。バッテリーの備蓄容量は1MWh/1MWで、スウエーデンの化石燃料よる電力供給が無くても島内で安定した電力供給が出来ることを実証することを目的として建設するとしています。

Bornholm島では、2016331日、”Bright  Green Island” (輝く緑の島) 計画を立案しました。その一環として、すでに風力発電、太陽光発電、バイオガスやバイオマスなどのプラントを導入し、不足分はスウエーデンから海底ケーブルで電力供給受けています。バッテリー導入の背景に、ボーンホルム島は、スウエーデンからの電力供給に依存しない島の電力供給として、風力・太陽光など不安定な発電と比較的安定した電力供給が見込めるバイオマスやバイオガスの発電を組み合わせ、バッテリーを取り付けて電力を備蓄を図り、安定した電力供給体制を作り上げるというスマートグリットの実証試験で、試験期間は4年間としています。

このボーンホルム島におけるスマートグリット*電力供給体制が実証されれば、世界各地の離島において採用できるモデル事業になるのではないかと私は見ています。

 

*スマートグリッドとは、電力の流れを供給・需要の両側から制御し、最適化できる送電網のことを言う。

                               (了)