ロシア軍のウクライナ侵攻について(20220322)

2022年2月24日ロシア軍がウクライナに侵攻後間もなく1か月になろうとしていますが、ウクライナ人の国防戦は続いています。ロシア軍の侵攻前のウクライナの人口は約4,400万人ですが、主に女性や子供、高齢者が近隣諸国に避難しています。その数は毎日増え約280万人とも言われています。デンマークには約16,000人のウクライナ国籍の人が住んでいますが、国防のため、仕事を止めて帰国した人の数は解りませんがいます。デンマークの大手の衣料品会社は、従業員がウクライナを護るため参戦する場合は期間制限なく全額給料を支給すると発表しています。ウクライナ国防志願兵数は約2万人とも言われています。ウクライナでは18歳から60歳の男性は国防に携わる義務があるとのことで(小さい子供が沢山いる父親は免除されると言われていますが、)国防に当たっていると報道されています。数値でロシアとウクライナ間の戦闘における最初2週間の結果を見ますと以下の通りになっています。(2022年3月11日デンマークの新聞Kristelig Dagblad)

・ロシア軍の死亡者数(CIA情報を基にした情報)2,000~4.000人、但しロシア情報では498人、ウクライナ情報では12,000人と発表されています。

・ウクライナから国外への避難者数:約231.6万人

・救援軍事物資(NATO諸国及び スウエーデン、フィンランド):対戦車ミサイル17,000発、携帯型地対空ミサイルステンガー2,000発、10万丁規模の機関銃、数百トンの弾薬が供給。

ロシア軍の侵攻に対しウクライナの国防支援としてデンマークが採って来た支援策についてみますと次の通りです。

①  デンマークの政府議会の支援について;

デンマーク政府はウクライナの避難民を救済するため、3月16日「ウクライナ特別法」を議会で決議し、3月21日(月)から施行することにしました。この法律はウクライナ人を救済するための2年間の期限付き特別法です。この法律ではウクライナからの避難民は、デンマーク入国後直ぐに就業することが出来ること、子供達の就学も許可し、デンマークの医療・社会福祉策の恩恵も受けられること。等となっています。通常、難民や避難民の場合は、デンマーク滞在の許可を得るまで、その手続きに数か月以上もかかるのですが、ウクライナからの避難民に対してはその手続きを省略することにしたのです。デンマーク政府によりますと、デンマークが受け入れる避難民の数は約2万人になると見ています。ウクライナ特別法を基に国と地方行政が協力し合い、この先ウクライナ人のデンマーク労働市場における割振りが始まりますが、デンマークの業界で人出不足と言われている農業、手工業、ホテル・レストラン業においては、英語が出来るウクライナ人の労働力は即戦力としてデンマーク業界にとって、大きな助けとなると筆者は見ています。

 

②  デンマークの業界及び市民の支援について

デンマークの業界及び市民によるウクライナへの支援策では、個人による衣類、食料、出向え(避難民を受け入れため自家用車で出迎えに出る)支援、赤十字のよる支援物資の収集を配達などがあります。3月12日(土)には現金支援金を募るため、デンマーク国営放送による「ウクライナ救済コンサート」をコペンハーゲン市役所前広場において企画し業界及び個人からの募金を募りました。この野外コンサートには約3万人の人が集まり、2時間に渡り生中継を全国に放映、結果として業界や個人から寄付されたお金の累積額は1億6,520万クローネと発表され、この野外コンサートを開催する前までに集まった募金額7億5千万クローネと合わせると約9億1,520万クローネ(約161億円)の支援金が集まったと発表されました。この他に人民緊急支援団体による個別訪問での募金活動(全国で3月13日実施された)では1,700万クローネが集められたと報道されています。

 

③  デンマークの国防費の増額について

デンマークの政府与野党間において、ロシアのウクライナ侵攻を背景に国防費の増額を決めました。2022年の予算によるデンマークの国防費は271億クローネですが(対GNP約1.2%)、2033年には国民総生産(GNP)の2%に当たる450億クローネに増額することを決めました。国防費の増額については、デンマーク以外の国々でも増額する計画があり、今後、軍事物資の生産が増えることが見込まれます。

 

④  デンマークのロシアの石油と天然ガスに依存しない政策について

デンマークは1970年代における中近東からの石油依存を減らすため、国内エネルギー資源の活用に努めてきました。その一つは風力発電ですが、図1はデンマークの国内電力供給に対する2003年から2021年までの風力発電の占める割合の推移です。図1で見る通り、デンマークの電力供給に占める風力発電の占める割合は2003年の16パーセントからほぼ毎年増え続け、2021年のそれは約44パーセントとなっています。この数値は2019年及び2020年に比べ減っていますが、その理由は風力エネルギー量(気候変動?)が前年に比べ10パーセント少なかったこととともに、電力需要量が5パーセント増えたとなっています。デンマークの人口はこの先も増えることが見込まれております。それに加え前述したウクライナからの避難民も含めるとデンマークの電力消費量はどの程度増えるか解りませんが増えるはずです。

 

図1.デンマークの電力消費量に占める風力発電量の割合推移(2003~2021年)

(Kilde: Wind Denmark’s Medlemsmagasin nr. 01, 2022, s. 39)

2021年デンマークの太陽光による電力供給量の割合は3.6パーセントで、2021年風力発電と太陽光発電の電力消費に占める割合は47.2パーセント(内風力発電43.6%)となっています。この他デンマークのエネルギー供給においては、家畜の糞尿をベースにしたバイオガスによる熱電供給、廃棄物や麦わら、ウッドチップを燃料としたコージェネ発電があり、ロシアの石油や天然ガスの依存から抜け出すことは出来る、そんなことも含め世論調査によると「ロシアの天然ガスに依存しない」という意見が78パーセント占め、そのことで仮にデンマークの天然ガスによる熱量代が高騰しても受け入れる(注)、と発表されています。ということは、デンマークが採って来た国内資源を活用しての電力や熱供給政策はロシアからの天然ガスや石炭(もともとデンマークの地球温暖化防止策で石炭の使用は削減)に依存しない政策にも繋がり、また、エネルギー供給以上に大事な国土を利用した食糧の自給に努めることからみて、国家の経済的危機にはならないと筆者は見ています。

(注)デンマークの2020年における総エネルギー消費量は650ペタジュールでこの内天然ガスの占める量は87ペタアジュールで総エネルギー消費に占める天然ガスの占める割合は13.3パーセントです。天然ガス消費量の59パーセントはデンマーク国産で残りはドイツからの輸入ですが、その中にロシアの天然ガスが含まれおり、デンマーク政府はロシアのウクライナ侵攻を理由(経済制裁)として、ドイツから天然ガスの輸入を止めることにしています

 

2022年3月22日

 

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