デンマークにおける風力発電設置に関して-その手続きとその設置場所の法的根拠-

デンマークが世界最大の風力発電所有国になった背景には、1973年のオイルショックと云われた石油供給危機の経験を踏まえ、国外エネルギー源の依存を減らす目標をたて、その中に風力発電の導入を位置つけたことが大きな原因になっている。国家の運営上大事な電力エネルギーの供給を可能な限り、国内に求めるための手段として、風力発電所の意義を見出し、それを基に風力発電の導入上に必要な一切の業務を一本化したことである。デンマークの風力発電導入における申請手続きに関し、1991年6月1日導入された1991年5月14日付け環境省省令304号の規定がそれである。これについてその概要をここに紹介する。この省令は2000年4月に一部改正された。特に風車の設置場所と定住地との関係が無くなり、また、共同組合で所有する発電量も上限も廃止した。さらに農場主が所有する農地に建てる風車の設備は一基と決まっているものの発電機の上限は廃止した。そのため、現在デンマークの農家が個人所有する風車の規模は1MW~2.0MWと大きくなっている。
1.設置手続きの概要:
1991年6月1日付け環境省令304号の発効により、デンマークでは風力発電所を設置する場合、その規模の大小にかかわらず、設置する前に建築法の規定で建築許可を得なければならない事になっている。風力発電所の建設許可申請書の提出先は、アムト(件行政区)であるが、その発電所を設置する場所のコムーネ(市町村役場)に出願し審査を受け、その後にアムトに申請する方法を採っている。建設許可書はコムーネが発行する。建設申請書に添付する書類は下記の通りであるが、風力発電の建築願いの申請をする前に以下について確認する。
イ) 風力発電所有者として電力使用量と居住条件が満たされているか。
ロ) 設置する場所において経済的採算がとれるかどうか。
ハ) 選択する風力発電機のサイズと設置場所と騒音条件が満たされているか。
項目イ)について:
デンマークでは、風力発電機の所有者は風力発電を建設する市町村内に定住していることが条件になっていた。 つまり規定では「申請人は風車を設置する市町村内に住民登録をして定住しているか、あるいは風力発電機までの最大距離10km以内に定住している者」と決めていた。1世帯当たり所有出来る発電量は共同組合で所有する風力発電所の場合、1世帯当たりの電力消費量6000kWhに35%を加算した量または、実質消費量となっていた。個人所有の風力発電に関しては、主な職業を営む者がその所有地の中に最大150kW一基所有出来ると決めていた。ここで言っていることは農地を所有する農場主が風力発電を導入するうえでの条件を語っている。

風力発電所の系統連系
エネルギー庁はこれらの条件を満たした民間の風力発電所の系統連系に関し電力供給会社に対し、系統連系を要請している。このようなり理由でコムーネが出す建設許可のコピーは、アムトの環境課、電力供給会社に送付される。
2.設置許可に関する各種法律
風力発電所を設置する場合、各種の法律の規定があり、その規定に抵触すると、建築許可が下りるまで長年を要し、また許可が下りないことがある。デンマークにおける風力発電所の設置場所に関する各種法律としては建築法、土地分譲法、環境保護法、自然保護法、自然保存法航空法・電波通信法、そして農地法がある。そして風力発電所の設置場所として、これらの法律を総括して立法し導入しているのが、(国土)計画法である。国土計画法は国の政策方針に合わせ、地方自治体のアムト、そしてその管轄下にあるコムーネがその地域及び区域の土地利用に関し、細かな計画案を立て、議会可決後市民に公示し承認を得た後で導入実施している。こういう事から、地域や地区計画案は風力発電所設置場所のガイドラインとして利用されている。以下これらの法律の概略が以下である。
2.1.土地分割法(Udstykningsloven):
風力発電所の建設は、建築法で建築許可を得なければならないことは既に説明したとおりであるが、その建築許可申請に先立ち、風力発電所設置場所の土地を確保しなければならないことになっている。風力発電所の設置場所を買い取るか、場所の使用権のみを取得するかにより、その管轄官庁が違っている。例えば前者の場合は土地登記庁(Kort – og Matrikelstyrelsen)であり、後者の場合は地方の登記所裁判官(Tinglysningsdommer)の管轄下となっている。

風力発電所を建設する場所が第三者の土地の場合は下記に挙げる条件を満たさなければならないことになっている。
a. 土地分割法1条に基づき、設置場所を買い取るかまたは
b. 同法11条C、3項に基づき、土地の借用(=使用権)を確保するかである。
特に土地の使用権の登記については、同法11条C, 2項によると;
「通常、土地の使用権の登記は10ヵ年であるが、風力発電所は電柱または航路標識と同一扱いとし、下記条件を満たす場合は、その使用権の登記は無期限とする」という解釈をとっている(注.実際は30年契約を取る)。
a. 使用権を有する土地の面積が25平方メートルを越えない場合。
b. 土地の使用権契約は風力発電装置設置場所を目的としている事。
c. 風力発電装置の周辺を垣根で囲ったり、貸与したりしない事。
d. 土地所有者は未利用地の使用権を有すること。
e.(風力発電所までの)通行権、地下ケーブル配備権、地下土台設置権及び安全地権に関する権利の地役権を所有すること。また風力発電装置の付属設備としての建物、小屋及び変圧器設置場所の土地使用面積は5平方メートルを越えてはならないこと(越えた場合、土地使用権の登記は10ヵ年)。
デンマークの風力発電所の殆どは農地に建てられており、発電所として利用する土地の面積はタワー直径部分と小規模の変圧器を置くだけの面積に過ぎない。その理由は上記のためであり、またタワーの根元ま
で耕作してできるのはそのためでもある。登記に関する控訴は高等裁判所である。
2.2. 建築法(Byggelovgivning):
風力発電所の建設許可申請書はコムーナで取得出来し、審査書類もコムーナに提出する。コムーナは区域法(zoneloven)の規定でアムトにも転送する。風力発電機の騒音データはアムトに直接送付する。
風力発電所の設置は建築法16条1項により建築許可が必要である。つまり16条1項は「2条(各種建築工事に関する規定で風力発電所は同条2項に該当)に関する作業はコムーネ議会の建築許可無く始めてはならない、コムーネ議会は、申請者に申請物件に関する審査上必要とする情報について、その提出を要請する事ができる」。
風力発電所の建設許可申請書は申請者からコムーネ議会に提出する事になっており、風力発電装置は同法6条1a項に基づいて定められた1982年発効の建造物規定(Bygningsreglement)の5の2章により、構造的、技術的に満たされる物でなければならない、とされている。設置場所との関係では同規定3.1.2章と3.1.3章において、下記の通り定めている。

3.1.2章: 風力発電装置の高さは向かい側道路線の距離に0.4を乗じた数を越えてはならない
3.1.3章: 風力発電装置の高さは隣接境界線または畦道の距離に3m+0.5を乗じた数を越えてはならない。
しかしながら、現状ではこの規定は殆ど適用されず、特別許可(dispensation)措置がとられている。その理由は現在商用化されている風力発電装置の高さは30メートル以上の物が殆どであり、例えば、3.1.3条規定で計算すると、風力発電装置は隣の境界線から少なくても50メートル以上(30=3m+0.5x,x=54m)も離して建てなければならないという事になるためである。
コムーネ議会が隣接規定及び高さの規定について特別許可をした場合、同措置について、同法22条2項の規定により、隣接者に通告してその同意を得なければならないことになっている。異議申し立て期間は通告後から数えて2週間となっている。
またコムーネ議会の決議に関する控訴については、建築法23条の規定により、「コムーネ議会の決議は、法の解釈などに問題があったと見なしたとき、アムト議会に控訴できる」となっている。またアムト議会の決議に関する控訴は同法23条2項の規定で住宅省に控訴できる事になっている。住宅省に控訴する条件は、「法律の解釈または理解上に問題があったと」見なしたとき、としている。
控訴期間は2条1項の規定で4週間となっている。控訴有権者は建築許可を願い出た申請人または同風力発電所の隣接住民となる者となっている。

2.3.建造物保存法(Bygningsfredningsloven):
建造物保存法3条2項に定められている、中庭、広場、歩道、庭園、公園設備などの保存価値として認められた場所に、風力発電所を設置する場合は、同法10条の規定で環境大臣の許可を必要とする、とされ
ている。しかし、この種の場所に風力発電所を設置することは殆ど認められていないのが実情である。
控訴は計画庁(Planstyrelsen)に提出出来るが、計画庁の決定に対しそれ以上の控訴はできない。
2.4. 環境保護法(Miljøbeskyttelsesloven):
風力発電所の設置と環境保護法との関係について見る。同法の監督官庁はアムト議会である。そして同法の適用範囲は、ウィンドファームと150kW以上の出力をもつ風力発電装置またはローターの直径が20メートル以上の風力発電機である。
上記に該当する風力発電所の設置は環境保護法5章の規定で、環境認可を得なければならないとされている。同法5章の規定とは、特に公害を発生すると見なされる企業団体で、同法に関する「特に公害発生企業などに関する省令」によると;
項目H:電力及び熱生産企業
5. 150kW以上の出力またはローター直径が20メートルを越える風力発電装置。
6. 総出力が200kWを越えるウィンドファーム。
つまり、環境保護法5章では現在商品化されている全ての風力発電装置は建設する前に環境認可を受け、それに合格しないと設置できないということになっている。デンマーク環境保護法で言う、風力発電の公害とは騒音のことである。そして環境認可とは風力発電装置が発生する下記の騒音条件を言っている。デンマークの環境省は風力発電装置から発生する騒音に関し、下記の基準を出している(1991年5月14日付け環境省省令304号「風力発電装置の騒音に関する省令」)。
      記
2条; 「風力発電装置から発生する騒音は開放地の最隣接住居地の屋外において45dB(A)を越えてはならない」。
2項; 「隣接住居地とは風力発電装置所有者の住居地以外の住居地を言う」。
3項; 「風力発電装置から発生する騒音は住宅地及びその他の騒音に敏感な場所の屋外において40dB(A)を越えてはならない」。
4項; 「騒音に敏感な場所とは、例えば各施設(注:学校・病院)別荘地(サマーハウス)Kolonihave*のような保養地またはその目的として企画計画した場所を言う」。
*Kolonihave:都市内のアパートに住む人たちの為に、郊外に小面積の土地を割安に分譲又は貸与し、その人達が余暇を利用して野菜を作ったり草花を植えたりする場所のことである。
風力発電所を設置する場合、上記に掲げた騒音の基準が守られていなければならない。風力発電所建設許可申請書に風力発電装置の騒音発生データを添付するのはこのためである。
なお騒音を計る場合の条件は同省令3条の規定で:
「騒音を計る場合、8メートルの風速時における地上10メートルの高さで計った数値をA―ウェイト、1.5メートルの高さに矯正した数値とする」としている。なお騒音検査の実例は別紙の通りである。
騒音データの他に添付書類となるのは、風力発電所の設置場所の詳細な地図である。その地図には、風力発電所の設置場所、隣接住宅地および建造物が表示され、尚且つ騒音に敏感な各施設が表示されているの
も、さらに縮図、北方位印が記入されているものである。
騒音についての控訴:
アムト議会の環境認可に関する控訴は環境保護法70条の規定で訴える事が出来る。その場合、控訴有権者と控訴書類の提出先は下記のとおりである。
控訴有権者;アムト議会の環境認可によって、被害を被った者および関係団体、例えば環境保護法の74条の規定によるデンマーク自然保護協会。
控訴書類提出先; 自然控訴審査員会(Naturklagenævnet)*
*構成メンバー:会長 法律家 1名
最高裁判所の裁判官 2名
政治家 8名
この委員会によって決議された件案は控訴できないことになっている。
控訴期間:4週間
2.5.自然保護法(Naturfredningsloven)と自然保存法(Naturbeskyttelesloven):
デンマークの自然保護法と自然保存法の適用範囲についてみると、前者の場合、法の適用が国土の保護、保全、地域及び地帯の草植物また動物の生息地の保護といった大自然の保護を目的として導入しているのに対し、後者は湖水、水流、荒野湿地帯、海辺といった自然の中の限定した場所について保存するという法律の規定である。また自然法との関係では山林法(Skovloven)があり、山林の側に風力発電装置を設置してはならないと規定がある。
風力発電装置設置場所とこれらの法律の関係について以下記述する。
監督官庁:自然保護法の関係は自然保護審議会(Fredningsnævnet)であり、自然保存法についてはアムト議会(都道府県議会)となっている。
風力発電所の設置場所として自然保護法に抵触すると考えられる、発電所の規模は大抵の場合、個人所有の小規模発電装置である。ウィンドファームのような大規模の風力発電所建設には、事前に建設予定地が地域計画*の中に組み入れられている等、自然保護法および自然保存法に抵触することは、初めからそういう場所を建設場所として認めない、と言うことでこの種の問題は生じない。
*詳細は国土計画の項目で説明
風力発電所の設置場所として自然保護法の規定で殆どその許可が下りないと見られる場所は下記のような所である。

a.保養地、海岸線、旧遺跡場所(古墳含む)
b.山林の側、湖水又は泉の側、水流の側、教会の近く
c.湿地帯、荒野、沼地及び海辺の側
aについて;
特に旧遺跡の場所に関し、自然保存法12条において“旧遺跡の環境を変更したり、また旧遺跡と隣接する場所を分譲したり、登記したりしてはならない”と定めている。また自然保護法53条では“旧遺跡から100メートル以内に建物や小屋を建てたり、キャンピングカーを置いたり、またマストを立てたり、植林をしたりすることは自然保護審議会の許可無しに行ってはならない”と規定している。ということはこの種の場所に風力発電所を設置することは不可能とは言えないが、許可を得るのに難問題があるということである。
bについて;
自然保存法17条では“公私問わず、20ヘクタール以上の山林から300メートル以内に建造物を設置したり、キャンピングカーを置いたりしてはならない”と規定している。また湖水、水流との関係では自然保存法16条で“3ヘクタール以上の湖水(泉)、川幅が2メートル以上の水流の場所から150メートル以内に建造物などを設置してはならない”と定め、また教会との関係では自然保護法47条bにおいて“教会から300メートル以内に風力発電所を設置してはならない”と定めている。
この種の場所に風力発電所を設置する場合は上記a.項と同じく、自然保護審議会の許可を必要とする。
c.について;
湿地帯については、自然保護法43条で“湿地帯周辺への装置など設置に関しては許可無く実行してはならない”また荒野については同法43条a.“5ヘクタール以上の荒野への耕作、植林またはいかなる環境の変化もアムト議会の許可無く実行してはならない”規定し、また沼地及び海辺に関しては同法43条b.で“3ヘクタール以上の沼地および海辺の開拓、植林又はいかなる環境の変化もアムト議会の許可無く実行してはならない”と定めている。
上記で述べた場所に風力発電所を設置する場合は既に述べたとおり、アムト議会に申請し許可を得なければならない事になっているが、許可されることは殆ど無いと見ていいだろう。
控訴:上記a.とb.の自然保護審議会決議に関する控訴は、自然保護法58条により公示後4週間以内に高等自然保護審議会(Overfredningsnævnet)に、またc.に関するアムト議会の決議は、自然保護法45条の規定で公示後4週間以内に環境大臣に控訴できることになっている。
2.6.航空法(Luftfartsloven)と電波通信:
風力発電装置設置場所については、航空法との関係からその規制を見ると、航空法61-68条は航空機の安全操縦のため、風力発電所など空港の近くに建ててはならないことになっている。航空法によると、例えば;“風力発電所は小規模空港から2.5キロメートル、大空港から5.0キロメートル以内の着陸進行方向に設置してはならない(63―65条)”と決めている。また飛行場近くの建物の高さ制限に関しては航空法67条a.において“飛行場近くに、建物を含めた高さが100メートルを越える場合の建造物は建築を始める前に、その旨を航空管理当局(Luftfartsvæsenet)に届け出、認可を受けなければならない”と規定している。
航空法67条a.の規定は特にユトランド半島の西海岸に沿って、規制を設けたもので、法の目的は空軍が低空飛行訓練をする場所として指定保留している為である。
また航空法68条の規定によると、“公共事業省は国防省と協議のうえ照明又は音響装置、電波発信装置その他航空操業の安全に危害を与えると見られる装置について、設置計画変更、取り壊しなど要請することができる”と定め風力発電所設置に伴い航海及び航空無線交信の妨害を起こさないよう規制している。具体的事務取り扱いでは、風力発電所は無線発信受信装置場所から1キロメートル以内に設置できない事になっている。
2.7.農地法(Landbrugsloven):
農地に風力発電所を設置することが出来るという法の根拠は、農地法7条aの規定で“農地の限定した小面積を農業以外の目的として使用または貸与することができる”によって設置することができるようになっている。
3.国土計画法(Lov om planlægning):
3.1. 概要
デンマークで最初に国土計画法が導入されたのが1974年である。そして現行法は1991年6月6日付け法律第388号、計画に関する法律(Lov om planlægning)である。この法律の導入目的は同法1条において“この法律は国土の利用において社会的利益と国土の自然と環境保護、つまり人間の生活環境を尊重しまた動物及び植物の生命を保存する実りのある基盤の社会発展とを結合させることを確保するための総合計画である”と定めている。そして具体的には同条2項において下記の通り定めている。
1条2項 この法律の目的は特に(下記に掲げる);
1)全国とそれらのアムトコムーネ(都道府県行政区)とコムーネ(市町村行政区)における健全な発展となるべき計画性と社会経済の総体的評価。
2)価値ある建造物保存、都市環境および景勝の創造と保存。
3)大気汚染の防止、水および土壌さらに騒音の障害の予防そして
4)数多くの国民を計画作業に引き込むこと。
を目的としている。

計画法は12年毎に立案企画する事になっているが、地域および区域計画は4年毎に修正・改正する事になっている。
3.2国土及び地域計画法(Lands-og Regionplanloven):
現行の地域計画は1990年から1993年にかけ改正・修正されたものである。(1997年5月時点で全国おいて次期の計画案作成中)特に風力発電所設置場所との関係では、現行の計画の中ではかなり多く、確保しており、今後とも継続し多くに設置場所を確保するかどうか、1997年末に待つ必要がある。ただ、これからの動きとしては風力発電所の増設は海上になるであろう。例えば、今後大型ウィンドファーム*建設は陸地よりも海上設置される可能性が大きいと見る。
*ウィンドファームの定義はその地方自治体によって違っているが、ある自治体の例を見ると、ウィンドファームとは一単位当たり6基以上の風力発電装置をいっている。しかし最近では4基又は総出力1.5MW以上をウィンドファームと呼ぶよう検討中である。
地域計画に含まれていない場所に風力発電所を建設する場合は、申請し地域計画に組み込まれ、承認を得たあとではないと建築できない事になっている。
計画法22条1項において、各地方自治体は4年に1度の計画法の改正・修正をしなければならない、と定めているのはこのようなケースを考慮して為と考えていいだろう。ただしここで言う、計画に含まれない風力発電所とは主としてウィンドファームのような大規模な風力発電所の事と解釈している。
3.3.コムーネ計画法(Kommuneplanloven=市町村計画法):
地域計画の方針に合わせ、コムーネ計画が立案企画されている。地域計画の詳細がコムーネ計画である。
風力発電所設置との関係ではコムーネ計画法は特に;

1)風力発電所の高さ
2)風力発電所の環境に与える影響
に重点をおいている。
1)風力発電所の高さについて;
風力発電所装置は同計画法の一般建築法規6章で“建造物の高さは8.5メートルを越えてはならない”と規定している。しかしながら、風力発電装置については、例えば「同一の風車2台建設する場合はハブの高さは最大30メートル、ブレードの突端を含めた高さは最大45メートルとする。一台の風車の場合はハブの高さ最大41メートルでブレードの突端までの高さ最大62メートルとする。」と規定している。これを越える高さの風車は特別許可願いを出す必要がある。
2)風力発電所の環境に与える影響について;
ここで言う環境に与える影響とは例えば、開放地に8~10基に風力発電装置を建てることとか、住宅地の中に風力発電装置1基を建てることによって、周辺および隣接住民に与える影響のことを言っている。風力発電所の設置が地区計画に反するような場合は同法47条3項の規定で特別許可の措置をとることも考えられるが、その前提は計画法の基本方針に触れないことである。つまり、風力発電所に隣接するであろう住民の苦情は(建設反対などの)、正当な理由が無い限り認められないと解釈して良いだろう。
3.4.区域法(Zoneloven):
この法律の適用目的は、特に景勝、保養地および農地の利益を保護することを目的としている。例えばこの法律の適用場所としてはラムサール協定(Ramsarkonventionen*)およびEECの鳥獣保護法則(EF-fuglebeskyttelsesdirektivet)に定められた区域に風力発電所を設置する場合は配慮が必要と定めている。
*ラムサール協定で各国が水鳥の生息地として保護した場所。
区域法によって発行された、風力発電所の建築許可は発行後3年以内に使用しなかった場合は無効となる。また1年以上稼動しない風力発電所は発電所所有者の経費で取り壊すこととなっている。
デンマーク“エネルギー計画2000”と風力発電に関して
デンマーク政府の“エネルギー2000年”計画によると、デンマークは2005年までに風力発電設備を1500MWまで増設し、電力消費量の10パーセントをまかなうことを目標にしている。
風力発電増設と計画の推移:
1.第1次増設計画(1985年計画)
1985年計画によると、デンマークの電力会社は1986~90年の5ヵ年間に風力発電所を100MW増設するという事であった。その分担は以下の通りである。

2. 第2次増設計画(1990年計画)
1991年1月17日、デンマークの環境大臣はエネルギー大臣と協議の上、デンマークエネルギー行動計画の一つとして、風力発電設置場所委任会(Vindmøllerplaceringsudvalget)を発足させた。(以下委任会として引用)
委任会の構成メンバーは、計画庁、エネルギー省、環境省、農業省、森林および自然監督庁、地方自治体、電力会社、農業協同組合、風力発電装置製造業者組合そして自然保護関係団体などの代表15名からなっていた。そして委任会に課せられた業務は1994年1月1日までに電力会社所有の風力発電設備を100MW増設するための方策を提案することであった。委任会は、増設計画の立案にあたり下記の基本方針を掲げて業務することとした。
―増設する風力発電装置の出力は、電力会社が所有するものについて、中型発電装置(250~450kW)を主要機種とする。
―風力発電装置100MWの増設分担は1985年計画と同じく、下記の通りとする。
(a)ELKRAFT領域内 45MW(注参照)
(b)ELSAM領域内 55MW(注参照)
―風力発電所の増設には風力資源との関係から、地域計画書の中にその適地を書き込むこととする。
―委任会が推奨した場所は、直ぐに地域計画に取り入れて留保するかまたは区域許可を出すこと。
―増設する風力発電所は既存の電力網に接続することとし、無理な負担は避けること。
(新にネットを整備してまでも風力発電の増設はしないということ)
―国家計画指令(Directive)の発効は100MWの増設計画が、地方分権による計画遂行では不可能であると認められた時に初めて検討することとする。
―民間の風力発電所有者との協力関係も継続して維持していくこと
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注:ELKRAFTとELSAMについて:
a.ELKRAFT
ELKRAFTとは東部デンマーク エネルギー協会(Det Østdanske Energi Samarbejde)の名称で有限会社である。この協会の加盟電力会社は下図の通りシェラン火力発電会社とコペンハーゲン市となっている。

ELKRAFTは1978年に設立、全部で8ヶ所に発電所をもち、従業員数は約100名となっている。
b.ELSAM
ELSAMとはユトランド半島およびフュン島の電力会社が集まって作った合資会社で、ユトランド―フュン電力会社協会(Det jysk-fynsk Elsamarbejde)と呼ばれている。ELSAMの加盟電力会社は7社で、以下の通りである。
1.Fynværket フュン電力会社
2.Nordkraft 北部火力発電所
3.NEFO, Nordjyllands Elektricitetsforsyning 北ユトランド電力供給会社
4.Midtkraft 中部火力発電所
5.Skærbækværket スケアベック電力会社
6.Sønderjyllands Højspændingsværk 南ユトランド高圧電力会社
7.Vestkraft 西部電力会社
ELSAMは1956年に設立、従業員数は300名となっている。
ELSAMとELKRAFTの主要業務は下記に記述したとおりであり、実際の発電には携わっていない。
ELSAMとELKRAFTの主要業務
・加盟電力会社の発電量の調整および管理
・高圧電力網の増設および管理監督
ELKRAFT
A.m.b.A
i/s Sjællandske
Kraftværker
(シェラン火力発電会社)
発電所数5ヶ所 所有
Københavns Kommune
(コペンハーゲン市)
Frederiksberg Komme
NESA A/S
Nordvestsjællands Energiforsyning
A.m.b.A.
(北西シェランエネルギー供給会社)
SEAS A/S
Københavns Belysningsvæsen
(コペンハーゲン光熱局)発電所3ヶ所所有
ELKRAFT組織図
・諸外国との電力輸出入に関する管理監督、ELSAMの電力網はノルウェー、スウェーデン、ドイツとつながっており、ELKRAFTの電力網はスウェーデンにつながっている。しかしELSAMとELKRAFT間は電力網の繋がりは現在無いが近い将来接続する計画にある。
・発電燃料の調達と配給および各電力会社の燃料在庫管理
・新規発電所建築費の融資手配および手続き
・発電所の企画とその補助
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3.第3次増設計画(1996年計画)
この計画では電力会社所有の風力発電設備を西暦2000年までにさらに200MW増設するという政府と
電力会社との協定で、200MWの増設負担はELSAM領域内で110MW、ELKRAFT領域内で90MWとなっている。また、デンマークにおける風力発電所の設置状況に関しては別紙統計資料を参照願います。