洋上ウインドファームの建設要領と魚類への影響など(2014年調査報告)

 

近年、日本でも洋上ウインドファームへの建設が検討されている様子ですが、洋上ウインドファーム建設までの業務要領と、洋上ウインドファームの魚類への影響などについて、デンマークで、2014年に調べたものがありますので、HPに掲載することにしました。 

日本の洋上ウインドファーム建設に向け何等かの参考になれば幸いです。特に日本との関係では秋田に生息する魚ハタハタへの影響についての私見を記載しました。 

なお、この原稿は依頼を受けて調べたもので、文中不可解なところもあると思いまた、添付書類は削除していますのでご了承願います。

 

1.デンマークにおける洋上ウインドファームの建設に向けた業務要領について

例:アンホルト洋上ウインドファームの建設応募から

2009430,デンマークのエネルギー庁は「アンホルト洋上ウインドファームの建設に関する公的応募条件(Betingelser for offentligt udbud om  Anholt havmøllepark 30. april 2009)という名称での入札条件を記述した要領書を発表しました(全部で58ページの資料)。この資料にもとづき、アンホルト洋上ウインドファームの建設までの業務要領の内容について記述します。( )カッコ内のページ数は同資料のページ数を表示しています。この要領書で特に魚類の工事前調査についての概要を日本語に翻訳しました(赤文字)。

  

Indholdsfortegnelse  :目次 (2頁)

1. Den ordregivende myndighed ;発注機関と担当者名:エネルギー庁 (3頁)

2. Udbudsbekendtgørelsen :応募に関する欧州連合の応募指令にもとづく公募(3頁)

3. Koncessionens indhold :使用権内容(洋上ウインドファーム最大400MW)(37頁)

条件:再生可能エネルギーの促進に関する20081227日付け法律第1392号にもとづき、①工事前調査の許可規定、②発電設備の設置許可規定、③25年間に渡る風力エネルギー源による発電設備許可規定、④発電への許可規定

4. Betingelser for deltagelse;入札者への条件(7頁)

5.Tildelingskriterium:配当条件、契約料金(キロワット時当たりへの単価)は400MWの定格出力5万 時間計20TWhまで支払う(400,000×50,000200億kWh)。(78頁)

6. Forpligtelser i forbindelse med etablering og nettilslutning :系統連系と同接続に関する義務 (89頁)                                                 7. Tilbud og forbehold:入札額と条件(9頁)

8. Tilbudsfrist og formkrav :入札期限と書式要領(9~⒑頁)

9. Ændringer i udbudsmateriale, anmodning om yderligere materiale :公募条件の変更と補足資料の要請(1011頁)

10. Annullering :取消(11頁)

11. Omkostninger ved deltagelse og vedståelse :入札費用と契約(⒒頁)

12. Behandling af tilbud mv.:入札書類等の審査(⒒~12頁)

13. Forhandling :交渉(12頁)

14. Oplysninger m.v. om skat, miljøbeskyttelse og arbejdsmiljø:租税、環境保全及び労働環境に関する説明書(1213頁)                                      15. Tjekliste :点検表(13頁)

16. Tidsplan for udbudsforretningen :入札に関する時間表(1314頁)

17. Klageadgang :苦情申し立て要領(14頁)

 

洋上ウインドファーム建設海域のおける魚貝類への影響に関する調査は、工事前海域調査項目の中に入っております。以下その明細です。

Bilag:   入札条件等に関する明細(1558頁)

1.deltilladelse til forundersøgelser 1519頁)工事前海域調査:

海域調査費用は事業者が負担する。事業主は洋上ウインドファーム用海域面積144km2の工事前調査おいて、海域調査を実施する前に海運庁および漁業局への海域調査許可願い提出、例えば事業者は海域調査実施4週間前に遠洋庁に通告すること。①事業主はデンマーク漁業組合に海域調査に関し協力の申し立てをし、可能な限り漁業期とかち合わないような時期に調査をする。②海域調査には漁業局任命の漁業専門家を同行させる。③漁業専門家への労働時間、労賃保険など報酬に関しては、同人は記帳簿(日記)を作成し調査後10日以内にエネルギー庁に提出すること。④海域調査計画書は「漁業誌」(Fiskeri Tidende)に通報すること。

2.Modeltilladelse til etablering af elproduktionsanlæg samt tilhørende internt ledningsnet :発電設備の設置とそれに伴う配線網の許可願い(2032頁)

2.a. om krav til nettilslutningen, evt. pladsleje bl.a. tidsfrister for spændingssætning samt evt.   pladsleje :海域の保護と系統連系条件(3338頁)

2.b. om krav til søafmærkning :海域表示条件(3941頁)

3. Modeltilladelse til elproduktion :発電許可(4245頁)

4. Modelbevilling:認可条件(4648頁)

5. Tro- og love erklæring:条件厳守に関する声明書(49頁)

6. Erklæring om arbejdspladsen mv. 労働保護と労働条件厳守への声明書(50頁)

7. Erklæring om forpligtelse til at etablere og nettilslutte et elproduktionsanlæg, Anholt Havmøllepark, i Kattegat:アンホルト洋上ウインドファームにおける発電設備と系統連系敷設に関する義務への声明書(51頁)

8. Aftale om forpligtelse til at etablere og nettilslutte et elproduktionsanlæg, Anholt Havmøllepark,i Kattegat:アンホルト洋上ウインドファームにおける発電設備と系統連系敷設に関する義務への契約書(5257頁)

9. Udkast til anfordringsgaranti :参着払いの保証書(58頁、このプロジェクト保証金額は1億デンマーククローネ)

 

漁業と洋上風力発電所の設置に関する調査について:

上記の入札条件等に関する明細1.の規定(工事前調査規定)により、洋上ウインドファームを建設する海域における魚介類への影響に関する調査を実施しました。同調査を実施したのはこの分野で多くの実績を踏んでいるKrogコンサルト会社です。同社が実施した調査の結果は20099月、「アンホルト洋上ウインドファーム海域における魚類の生息と風力発電所設置による影響に関する実地調査」(Kortlægning af fiskearter/-bestande samt effektvurdering ved etablering af Anholt Havmøllepark49,添付)として発表されました。

 

この報告書の中で風車の設置に伴う騒音と振動による魚類への影響に関する調査は、第4章で「洋上ウインドファームの工事及び稼働における魚と魚種類への影響」(Effekten af anlæggelse og drift af havmølleparken på fisk og fiskebestande)という課題で調査しています(添付2)。第4章の調査内容とそれの記載事項のページは以下の通りです。

4.1Støj og Vibrationer (騒音と振動 ) 32

    Støj i anlægsfasen(工事中における騒音)34

     Støj i driftsfasen(稼働中における騒音)35

4 .2 : Sedimentspild(砕石沈殿)36

4.3: Elektromagnetiske felter(電磁波)37

4.4: Rev-effekt(砂洲効果)39

4.5: Afviklingsfasen(工事後)40

    Støj og vibrationer(騒音と振動)

    Forstyrrelse af havbunden og sedimentspild(海底と砕石沈殿の妨害)

    Fjernelse af hård substrat(硬度物資の除外)

4.6: Kumulative effekter(累積効果)41

4.7: Sammenfattende effektvurdering(効果評価の概要)

     Midlertidige effekter(短期的効果)

     Permanente effekter(長期的効果)

4.8: Summary of assessments and significance rating of data調査データの有効評定と査定の概要43   

 

以上ですが、この中で4.1の項目について要約を記述します。

4.1Støj og Vibrationer (騒音と振動 ) 32

 洋上ウインドファームの建設においては短期的にも長期的にも魚への影響が発生することが考えられる。魚への影響においては工事期間中における騒音、砕石沈殿害(モノパイル式の基礎工事では打ち込んだタワーの周辺に砕石石を沈殿させ砂が波力で移動しないようにしている。)海底の平静妨害などで魚の成育環境を乱すことが考えられ、また風車の稼働中における騒音や振動による魚への被害が考えられ、また送電線による電磁波による魚への影響が考えられる。よってこの調査報告書はこれら懸念への回答である。 

風車の設置工事及び稼働期間中における魚への騒音及び振動の影響はその魚の種類によって異なる。魚の音や振動に関する感知能力は魚の解剖体(anatomy)の発達によって異なる。

魚の音や振動に関する感知は二つあり、その一つは浮袋(Svømmeblære英訳:Swimming bladderを通した内耳とその二つは魚の脇腹の沿った側線と呼ばれている小さな穴である。魚の聴覚は音波の他に水中における魚運動によるものである。魚には内耳と浮袋の発達した「聴覚の優れた」魚と聴感の良くない「通常の聴覚」の魚がいる。この「通常の聴覚」を持った魚はさらに二分割され、その一つは「浮袋」を持つ比較的聴覚の良い魚と二つは「浮袋」を持たない聴覚の悪い魚に分けられる。この中で音に敏感な魚は前者である。

音に敏感な解剖体の魚については表22の通りである。

22で見る通り、解剖的に音に敏感な魚はニシンで音への感知周波数は約2,000Hz、から130KHzもある。浮袋を持つタラ、ウナギ、小ダラは音への感度は「中」で,感知する周波数は500Hz、タラが感知する音強度は50110Bである。魚の聴覚では、浮袋を内蔵する魚の多くは約500Hz上限とし、浮袋を持たない魚の聴覚は100200Hzである。その他、魚で解剖的な聴覚が無く、浮袋を持たない魚は音への反応は鈍い。ヒラメやカレイなど平たい魚は水流の変動に合わせて移動方向を決めている。表22はデンマークの北海に建設されたHorns Rev第二期工事(2300kW、91基の洋上ウインドファーム)に伴い工事前調査で調べた魚への影響に関するデータである。

 

22.魚の種類別にみた騒音への感受性(調査は北海の洋上ウインドファーム第二期工事の事前調査による)要約

魚名

解剖的順応性

感受性

くもがき

浮袋無し()

ウナギ

浮袋在り&無し

ニシン

解剖的に特性

小イワシ

解剖的に特性

カサゴ

浮袋無し

タラ

浮袋在り&無し

タラコ類の食用魚

浮袋在り&無し

タラの一種

浮袋在り&無し

サバ

浮袋在り&無し

カレイ、ヒラメ

浮袋無し

小カレイ

浮袋無し

いかなご

浮袋無し

    (注)解剖的順応性で「無し」は魚の体内に騒音や振動を感知する「内耳」  

        が無く結果としてこの種に属する魚は騒音や振動の害が中と評価。

上記表から、問い合わせ事項の「ハタハタ」の騒音や振動に対する被害(影響)ついて、ハタハタは浮袋を持たない魚であるため、音への聴覚は鈍感で、上記表の「感受性」では低の分に入る(注1)。「秋田では海が荒れて雷鳴がとどろくようなときにハタハタとれると言われる」。ということはハタハタは音に対して鈍感であることで荒海でも生息できるのだと思う(注2)。

(注1)ハタハタ:体は体高が高く、左右に扁平でうろこがない。小さな歯が並ぶ大きな口が上向きに斜めに付く。鰓蓋に5本の鋭い突起がある。背ビレは前部と後部が完全に分かれ、かなり離れている。尾ビレ、胸ビレが大きく、特に胸ビレは非常に大きい。浮き袋は持たず、昼間は泥や砂に埋まって目や背ビレだけを出して隠れ、夜に行動する

(注2)

ハタハタの基本◆
■秋田県の郷土料理にはなくてはならぬもの。
■ハタハタの商品価値を上げているのが卵巣である。秋田では「ぶりこ」という。確かにこの「ぶりこ」、旨味が濃厚にありねっとりと舌にからむ。身のうまさからいっても一級品のハタハタにしても「ぶりこ」が入っていなければ値打ち半減なのである。
■秋田では海が荒れて雷鳴がとどろくようなときにとれると言われる。
■漁獲量は北海道釧路、噴火湾、北陸、山陰などが多い。
■秋田名物であるハタハタを1960年代の水準まで戻そうという努力は、やや上向きにある漁獲量に表れている。漁獲量の激減した1990年前後に秋田市民市場を歩いても県内でとれたものは見当たらず、鳥取や北海道からのものばかりであった。これが2006年には東京でも秋田産の大ハタハタが目立った。

卵巣(ぶりこ)◆
■普通卵巣は未成熟のものがうまい。秋田市で聞くと成熟した殻の硬いものがいいという。これを口に含んでガムのように噛み、エキスを楽しんでそとの皮部分を吐き出すのだ。
■昔水戸の藩主であった佐竹公が秋田に国替えになったとき、ブリの料理で正月を迎える習わしであったところを、ブリがとれないのでハタハタで代用した。その卵を「鰤子」と名付けた。

ハタハタの加工品◆
■塩汁(しょっつる)はハタハタの魚醤。これを鍋の調味料として使う。
■ハタハタのいずし(飯ずし)。近江の鮒ずしとは違って漬け込みに麹を使用する。なれずしではなく「飯ずし」の一種。
■「三五八漬け」。ハタハタを三五八漬けのもとで漬け込んだもの。
■若狭などではハタハタのしょうゆ干しを作る。
■ハタハタの干物。

生息域◆■日本海、北日本。カムチャッカ、アラスカ。

生態◆
■産卵期、稚魚期以外には深海に棲息する。
■産卵期は晩秋から冬。産卵期には浅瀬の藻場などに集まる。
■卵は海水に触れると粘着物質を分泌して塊になり、藻などに付着する。
■抱卵数は少なく大きい。一個体で1000粒から2400粒。
■雄の方が早く成熟し、雌の方が遅い。
■雌(めす)の方がやや大きくなる。

大きさ◆20センチ前後になる。

 

Støj i anlægsfasen(工事中における騒音)34

①短期的影響

洋上ウインドファームの建設においては工事中の船舶の移動、採掘及び基礎となるモノパイル打ち付け工事による騒音が発生する。船舶や海底調査と採掘工事などでの騒音レベルは騒音基準値内(80200Hz及び130200B)で殆どの魚は騒音が感知できる。魚の種類によって感知する騒音は騒音源からの距離によって異なり、またその海域における背景騒音(風、潮流、波浪など100B以上計測)によっても違ってくる。その他に船舶の運航による比較的高い騒音(1001000Hz で>150B)の影響も関係してくる。最も騒音と振動が大きい作業はモノパイルの打ち込み作業で最大値320Bにもなるが、通常は215250Bの騒音である。

この騒音と振動が大きい作業過程において、騒音への感受性が高いニシンやタラはその海域から離れ、また近寄らないが、工事が終わると戻り魚の数は減ることが無い。

Støj i driftsfasen(稼働中における騒音)35

洋上ウインドファームの稼働中における騒音レベルは50120B(周波数<200Hz)で風車の近くにおいては魚への影響があり得る。風車の騒音と振動源はギアーボックス、発電機そしてケーブルなど構造的音とローター回転による騒音である。これら騒音はタワーを通し基礎部に移行し海底から海水へと移行する。そして振動は基礎部から発生する。風車の稼働中の騒音レベルは風速との関係で変動するが工事中の騒音と異なり継続的騒音である。このことは魚には見当が付く騒音である(風速と共に出てくる騒音で自然界からの騒音という意味で、工事による騒音とは異なるという意味)。騒音や振動へも感受性が高いニシンやタラは数百メートルの距離において聴覚するが、ヒラメや海底で生殖する魚は数メールの距離で初めて騒音や振動を感知する。

4.6: Kumulative effekter(累積影響)41

計画されたウインドファームあるいは人間が作った構造物によって発生する累積影響に関して、例えばアンホルト洋上ウインドファームから30海里(約55㎞)離れた大Middelgrund 洋上ウインドファームの評価で見ても、これらの建造物、あるいはAnholt洋上ウインドファームに最も近い場所における計画においても、魚への累積的影響は見られない。ましてはアンホルト洋上ウインドファームや大Middelgrund 洋上ウインドファームから遠く離れた場所で魚への累積影響は、工事期間及び稼働期間においても無い。 

アンホルト洋上ウインドファームに周辺に数多くの洋上ウインドファームが建設されことになった場合、同ウインドファーム間における風車や船舶からの騒音の影響圏は同じものとして受け止められ、騒音による負の影響は比較的風車に近い場所に集まりそれによる累積影響はない。

多くの洋上ウインドファーム建設によって風車の基礎部分が魚の生息に必要な砂洲効果を生み、それによって共同作用効果(Synergy effectが生まれるため洋上ウインドファーム内及び洋上ウインドファーム間において全体として魚種の多様化が増大する。

4.7: Sammenfattende effektvurdering(影響評価の概要)

上記で触れた洋上ウインドファームの建設及稼働における短期的、長期的潜在的魚への影響に関して、評価する。

    Midlertidige effekter(短期的影響)

洋上ウインドファームの建設中においては、風車機材の搬入に伴う船舶の運航増、採掘及び海底での吹き付け(海底ケーブルを埋めるための溝作り)作業、基礎部の打ち込み作業などによる騒音が増大する。最も騒音に敏感なニシンやタラには作業による騒音の影響は考えるられるが、同海域に数多く生息するヒラメなど騒音に鈍感な魚への影響は少ないと見ているが、基礎部の打ち込み作業中近くに生息する魚には騒音による影響が多大で死ぬ魚も出てくる可能性はある。しかしながら工事が終了次第魚は戻り、全体として騒音による魚への影響は少ないと評価している。

海底での採掘などの作業中においては一時的に海水に浮動物資が増え沈殿物が増大する。

海底に生息する魚の卵や幼虫は沈殿物には敏感であるので、これらへの短期間の影響並びに近い場所での作業では影響はないとは言えない。視界の減少や、酸素欠乏などによる稚魚や成長した魚への影響及び移動形態では、例えば「したがれい」や「だんご魚」でみると最少で短期間である。当然のことながら建設工事を魚の繁殖移動期間からずらすことで魚への影響を最少額に押さえることが出来る。

     Permanente effekter(長期的効果)

洋上ウインドファームの基礎部に当たる面積は全体の面積に対し僅である。海域全体の面積は基礎の部分だけ減ることになるが、基礎が一方では砂州効果を増大させる。これによって魚種によっては洋上ウインドファームの基礎部は有効となる一方で海底で生息する平たい魚の場合は生息面積が減少する。にも関わらず、洋上ウインドファーム全海域における基礎部の占める割合は0.2%と少なく、全体に魚への影響は少ない。

洋上ウインドファームの稼働中における主な騒音は周波数<200Hz.の内部音である。風車の騒音による魚への影響に関しては様々な意見があるが、風車から出る音波は一定音であり、他の魚や動物の音とは異なり、風車音は背景音となるため魚は慣れてしまう。そんなことから風車からの騒音による魚への影響は最小限に留まると評価している。

電磁波による魚への影響では特に「ウナギ」や「ヒラメ」など平たい魚への影響が少しある。埋めたケーブルから数メートルおいて最も感受性の高い魚でさえ、電磁波の影響によって魚の総量に影響を与えるとは見ていない。

ウインドファームの全体面積における基礎部を占める割合がごくわずかで、海域面積が少し減るものの、基礎部が砂州現象を生み自然の海底となり、そのことで魚の多様化が多くなると思われる。よって風車の基礎による魚への影響はプラスにしてもマイナスにしてもごくわずかである。

 

デンマーク最大の洋上ウインドファームについての概要

Facts on Anholt Offshore Wind Farm

名称アンホルト洋上ウインドファーム

 

Wind turbines: 風力発電機シーメンス社3.6120

SWT - 3.6-120

Number of wind turbines  台数111

111

Wind turbine capacity  定格出力 3.6MW

3.6MW

Installed capacity of the wind farm:設備量400MW

400 MW

Hub height: ハブの高さ81.6メートル

81.6 metres

Rotor diameter :ローター直径 120

120 metres

Total height of wind turbine:風車の高さ141.6m

141.6 metres

Weight, blade:ブレード重量 118トン

18 tonnes

Weight, tower:タワー重量200トン

200 tonnes

Weight, nacelle:ナセル重量195トン

195 tonnes

Total weight of wind turbine:総重量450トン

450 tonnes

Weight, foundation:基礎重量400630トン

400-630 tonnes

Cut-in wind speed:カットイン風速 秒速4m

4m/s

Full production from定格出力秒速13m

13m/s

Cut-out wind speed:カットアウト風力秒速25

25m/s

Pile driving depth:モノパイル深さ1836m

18-36 metres

Water depth水深1519m

15-19 metres

Distance to shore:岸までの距離 15m

15km

Area of wind farm site;風車設置面積88km2

88 km2

Construction period建設工事期間20122013

2012-2013

Operation :起動年2013

2013

 

このアンホルト洋上ウインドファームはデンマークのエネルギー政策の一環として2008年に公募、唯一応募したのはDONG エネルギー株式会社(株主;国58.8%、新エネルギー投資会社17.9%、配電会社10.8%、その他12.5)2010年に建設のライセンスを取得。

工事期間は2012年から始め完成したのは201393日です。設置した風力発電機はシーメンス社の3.6MW111基設置(計約40万kW)。建設コスト100億クローネ(約2000億円)。この数値からキロワット当たりの設備投資額を算出しますと100億クローネ/400,000kW=25,000 kr 。(50万円)となります。売電価格は定格出力換算5万時間まで(約200kWh)キロワット時当たり1.05kr。(約21円)となっています。よって、起動年から約12年間(注)で受け取れる売電収入は210億クローネとなり、同額は投資額の倍になっています。同洋上ウインドファームの売電価格は陸内に建てられている風車のキロワット時の売電価格0.250.30kr.の売電価格に対し(約5円~6円)4倍~3.5倍になっています。

 

同洋上ウインドファーム見込み発電量はデンマークの電力消費量年間334kWh.に対し約4%に当たる16億~17kWh.(1基当たりの発電量は1440万~1530kWh)となっています。   注:200kWh /1617kWh=12.5 年~11.8年。

 

2.風力発電の発電量の保証について 

①メーカー:

基本的の陸上及び洋上における風車の発電量に関し保証はありません。

風力発電所の発電量は風況調査によって算出された見込み発電量を基にその場所毎の発電量が出てきます。そんなことで風況調査は数社から取り寄せることにしています。洋上ウインドファームは陸内風車と異なり設置する場所に障害物が無い(お互いの風車で影になる以外)ため、発電量の算出における方程式が満たられ易いと思います。201412月現在デンマークには全部で13か所に洋上ウインドファームが建設されています。風況調査を基に試算された見込み発電量と実績について比較したのが下記表1. です。

1.デンマークの洋上ウインドファーム建設年、設備及び発電量など(添付)

洋上ウインド

ファーム名

設置年

基数

平均出力

(kW)

設備量

(kW)

見込み発電量

(MWh)

実績(MWh)

2013年)

実績(MWh)

(2012)

Vindeby

1991

 11

  450

 4,950

   11,237

    8,229

  8,796

Tunø

1995

 10

  500

 5,000

   12,500

   13,334

 14,326

Middelgrund

2000

 20

2,000

 40,000

   93,650

   77,715

 90,742

Horns rev

2002

 80

2,000

160,000

  600,000

  615,396

675,995

Rønland

2003

  8

2,150

 17,200

   80,886

   62,779

 73,209

Nysted

2003

 72

2,300

165,000

  596,000

  532,869

575,157

Frederikshavn

2003

  3

2,533

  7,600

   24,000

   21,849

 20,556

Samsø

2003

 10

2,300

 23,000

   77,650

   77,591

 85,274

Sprogø

2009

  7

3,000

 21,000

   66,000

   62,227

 66,752

Horns revII

2009

 91

2,300

209,300

  800,000

  900,055

956,028

Hvidovre

2010

  3

3,600

 10,800

   32,100

   35,110

 38,051

Rødsand II

2010

 91

2,275

207,011

  800,000

  738,517

834,746

Anholt

2013

111

3,600

399,600

1,800,000

1,205,399

()

  7,738

(注)

(注)工事期間は2012年から始め完成したのは201393

風力発電の発電量はその年の気象条件によって発電量が変動します。上記表の中で北海に設置した風車(Horns Rev,第一と第二含め計約37万kW)の発電量は見込み発電量よりも実績が方が上回っています。よって、風力発電機の発電量に関しては、風況調査で試算された見込み発電量に対する達成率(90%、95%など)でプロジェクトの試算をしています。

保険会社:

デンマークでは陸内及び洋上ウインドファーム問わず風車保険が義務付けられ、デンマークには風車保険を扱っている会社は数社あります。その中で長年風車保険を取扱っている保険会社はCodan 保険会社です。風車の保険金額は新設の風車か中古風車かで異なり、また発電設備量によって保険金額が変動します。洋上ウインドファームの保険に関しては補償額が多額になるため、一つの保険会社では補償しかねる事を考え、保険会社が連帯し一つのウインドファームの保険を補うこともあります。アンホルト洋上ウインドファームの年間保険料は判りませんが、風車保険について陸内に建っている1999年に設置したボーナス1MW風車の風車保険の内容と掛金について調べ見ました。

補償内容:(1クローネは円で約20円)

●オールリスク保険、保険額 約937万クローネ

              自己負担額 18,210クローネ

●稼働停止保険(注):保険額:約70万クローネ

       年間発電量:180万kWh.

       補償期間:6か月

       未補償日:2日間 (注)

 (注):落雷等不慮の事故で風車が稼働停止した際に発電量を補償する保険制度、風車の稼働停止開始日から最初の2日間は補償がないという意味。

●責務保険;物体 5百万クローネ

      人体 1千万クローネ

●法務支援保険:保険額 75,000クローネ(この保険は正当権の論争における弁護士あるいは裁判所費用への支援に当てるため保険)全費用の⒑%但し最少額2,500クローネ。

5年間契約を結んだ場合の年間保険料:

  ・オールリスクと法務支援保険料(年):29,554クローネ

  ・風車の毀損及びトランス不具合:    1,733クローネ

  ・責務保険:               316クローネ

                      31,603クローネ

保険条件:保険で補償される損害・被害とは突然の事故(雷や落雷)または想定以外の事故で発生した機器への損害への補償、その事故が原因で発電不足が発生した場合への発電量への補償、それとメーカーあるいはサービス会社との正当権への争いが起こった場合における弁護士または裁判費用への補償となっています。よってオールリスク保険に加入した場合でも風車の稼働上での摩耗、手抜きサービスなどによって発生した事故には補償されません(保険条件の概要)。

 

③保証年数:

通常デンマークでは風車への保証期間は主な機器(発電機、増速機、ブレード、変圧器)で5年間と云われています。洋上ウインドファームの場合も同じ扱いと思われますが、洋上インドファームは規模的に大きいだけに契約上どのような取決めをするか、通常の売買契約とは異なると思われます。いずれにせよ、デンマークの洋上ウインドファームのサービスメンテはメーカーが実施しており、この事も含め、契約条項を決める上で協議が必要と思います。

 

風況調査はだれがやるのか。

デンマークには風況調査が出来る会社がたくさんあります。風車の建設では出来る限り正確な発電量を把握するために事業主は数社に風況調査を依頼しているようです。この中で陸内及び洋上風力発電における風況調査並びウインドファームのプロジェクト企画などで多大なノウハウを所持し実績を残している会社はデンマークのオルボー(Aalborg)市に本社があるEMDインタナショナル社(EMD International A/S, 会社案内添付)だと思っています。同社の会社案内によりますと(下記英文の要訳)同社はドイツ、フランス、スペイン、イギリス、アメリカ、トルコそして中国に支社を持ちスタッフ数は26名と書いています。また同社のコンサルト部は1988年から今日に至るまでに世界の国々で700以上計35,000MWのウインドファームの風況調査を手掛けたと会社案内に書いています。同社に風況調査を依頼する顧客は当然ながら風力発電所の事業主、ウインドファームに資金を投資する世界銀行及び各基金団体と書いています。

EMD is a software and consultancy company supplying countries worldwide with software and consultancy services within the field of project design, planning and documentation of environmental friendly energy projects, particularly wind energy projects. EMD has its main office located in Aalborg, Denmark, and regional sales offices in Germany, France, Spain, United Kingdom, USA, Turkey and China. The company has a total staff of 26 employees and growing.

An important task for EMD is to continuously update and improve our software packages for project design and planning of wind energy projects, CHP projects, etc. in close cooperation with the many companies worldwide, which use our software daily. EMD participates in various ongoing research and development activities within the renewable energy sector, this ensures that the EMD software continuously is upgraded with the latest knowledge and experience available within the field.The result is user-friendly, flexible and reliable software developed based on the latest knowledge and experience within the field and according to the demands of our many users worldwide.The consultancy team at EMD is internationally recognized for its independent expertise within wind energy as well as within development of co/tri-generation projects.As wind consultants, EMD has longtime, worldwide experience. Consultancy jobs have been performed in Canada in the North to Australia in the South and from Japan in the East to USA in the West. EMD performs over 300 consultancy jobs each year within wind energy for both private companies and banks as well as longer-term project assignments for DANIDA, World Bank and other international institutions.Since 1998, the wind consultancy team at EMD has conducted wind resource assessment, micro-siting and bankable annual energy production assessments on over 700 wind farm projects worldwide with a planned capacity of more than 35,000 MW.

Please download our company profile here.(会社案内参照ありたい)

デンマーク以外でも風況調査を実施している事業団体がたくさんあると思います。ただ風力発電の導入に必要な風況調査のソフトプログラムとそれを基にした実績を持っているのはデンマークの会社だと思っています。そういうことで、大規模のプロジェクトであればあるほど、風況調査では、この分野で多くのノウハウと実績をもつ会社を選ぶことだと思います。

 

洋上発電の風況調査方法

デンマークで風況調査に必要とされる風速や風向データは全国8か所で把握しています(添付参照)。風力発電所の設置場所における発電量の目安はこの8か所のデータを基として試算しその後サイト(風車の設置場所)での精査をしています。洋上ウインドファームでもこれらのデータを基に見込み発電量を試算(Calibration)しています。洋上ウインドファームの建設に先立ち同サイトに風速と風向を測定するためのマストを建て地上のデータと比較することもしています。風況調査会社では洋上における風況調査の最善方法はその海域に最も近い場所に設置している風車のデータだと云っています。デンマークのユトランド半島中西部海岸沖20km~40kmに約37万kWの風車を設置しています。このウインドファームの発電量の試算では添付資料の「1」と「2」のデータを使い、それを基に精査し見込み発電量を試算しているといわれています。洋上(海上)ウインドファームでは風況を妨げる障害物は全くありませんので(風車同志での影を除き)発電量の計算方式*での粗度の問題は殆どありません(洋上における風車の粗度クラスはゼロとして計算)

*発電量(P)=½×ρ×cp×A×V3、ここでρは空気密度、CP(ブレードの性能係数)、A(ブレードの受風面積)そしてVは風速の3乗で粗度クラスもここに含まれる。

 

秋田港や能代港で導入を検討している洋上ウインドファームの風況調査においては、洋上ウインドファームに隣接する陸内の風力発電機のデータを利用することだと、風況調査会社で語っています。例えば、秋田ウインドファームや仁賀保ウインドファームの実測値を基にこれら海域での発電量を試算する、ということです。

よって、近い将来、秋田湾や能代港に、洋上ウインドファームを建設するのであれば、風況調査においてのノウハウと実績を持つEMDインタナショナル社に風況調査を依頼する方法はあると思い、風況調査費用の見積書を取り寄せて見ることだと思います。(了)

 

添付書類(今回は削除)

-    Betingelser for offentligt udbud om Anholt havmøllepark 30.april 2009

2009430日付けアンホルト洋上ウインドファームの建設に関する公的応募条件)

-    Kortlægning af fiskerarter/-bestande samt effektvurdering ved etablering af Anholt Havmøllepark(アンホルト洋上ウインドファーム海域における魚類の生息と風力発電所設置による影響に関する実地調査) 

-    EMD Company profile 2014(EDM会社案内)

-    Vindmøller på havet(洋上における風車)

-    Nøgletal november 2013 201311月風力データ指数)

 

           Denmark Ørnhøj 20141230

            ケンジ ステファン スズキ