2018年11月12日付けデンマークの新聞Kristelig Dagblad よると、世界の国157カ国の中で最も平等な国はデンマークと報道しました。同紙が報道の根拠として利用したデータは慈善団体Oxfam(注1)が発表した「不平等指数2018年」でした。デンマークが世界で最も平等な国の理由として、デンマークの高税率による所得の再配分、男女同権、充実した社会保障、適切は労働賃金を上げています。
世界で最も平等な国の順位は①デンマーク②ドイツ③フィンランド④オーストリア⑤ノルウエーで、一方157国中で最も不平等の国の順位では①ナイジェリア②ウズベキスタン③ハイチ④チャド⑤シエラレオネと報道していました。
デンマークでも不平等が無いわけではありません。でもデンマークが他の国に比べて
不平等が少ないのは、なんと言っても、政治が常に不平等を是正する施策姿勢があること、世論が不平等問題を常に問題提起していることです。そして、デンマークに経済的不平等が少ないのは職種別の労働市場を採り入れ、それがもとでの労使間において、常に就労者を守る姿勢があること、教育費、医療費、高齢者介護費など社会福祉が整い、これら費用は納税額で賄う制度を取り入れているためだと思います。それでも、デンマークでは貧困者問題を取り上げ、経済的不平等(格差)が開いていることを指摘している人たちもいます。
また、リーマンショック(注2)から10年経った今、デンマークの就労者の生活に変化が出ているという、2018年11月13日付けデンマークの新聞Kristelig
Dagblad紙の報道がありました。それによりますと、デンマークの就労者は大きな住宅、高い車への投資を止め、これらへの投資の代わりに現状を維持し、労働時間を減らし、家族と過ごす時間を増やし、可能な限り旅行に出かけるといった生活に切り替えて来ていると書いています。同紙の情報源となっているのは、デンマーク銀行の調査などが基になっていますが、それによりますと、デンマーク人の35~54歳の24%、55~64歳の32%、64歳以上の25%は旅行と自由時間を増やしたいと望み、新車を買いたいという人の割合2~3%を大きき引き離し、またデンマークの労働運動経済協議会の調査では可処分所得に占める消費の割合は1967年以後最も少ないと書き、ロックウール基金の調査でも、デンマークの平均労働時間数は2001年の34.5時間から2015年のそれは31.2時間に減少と報告しています。
デンマークの就労者は労働時間を減らし、ローンを組まないことで借金をせず、家族と共に過ごす自由な時間を多く持つことに生活を切り替えているようです。(了)
2018年11月13日
(注1)Oxfam : Oxford Committee for Famine Relief
の略称、Oxfam
の創立は1942年で、オックスフォードの市民がナチス軍の侵攻で窮地に陥ったギリシャ市民に食糧と古着を送る活動から出来た慈善団体。活動の目的は世界の人々が貧困から抜け出せるための支援活動。
(注2)リーマンショックとは、2008年9月15日アメリカの投資会社リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破綻が起因し世界に金融危機を起こしたことの呼び名。