デンマークの2030年に向けた長期予算案、他(20230622)

1.デンマークの2030年に向けた長期予算案について 

去る523日デンマーク政府与党は政府の長期予算案を発表しました。それによりますと2030年におけるデンマークの財政余裕額は当初の見通しの480億クローネを160億クローネ上回り640億クローネ(約1.3兆円)になると発表しました。デンマークの経済はコロナやロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高の影響にもかかわらず、大きな成果をあげていると語られています。その中で労働市場においては高齢者の就労による増収が見込まれること、市民の猛烈な反対を押し切って、与党が導入に踏み切った祝日日の廃止(注1)などによる、増収が見込まれることが、財政の余裕増額の見込みの理由となっています。デンマークの労働人口年齢層は15歳~64歳としています。2022年第一四半期から2023年の第一四半期における労働人口数は69,000人増え、この内46,000人が就労し23,000人が失業者となっていますが、この中に、就学や健康状態など働けない人達も含めています。デンマークの全労働人口数は、約290万人で就労者数は増えています。デンマークの税収入が増える理由には就労者数が増えていることです。それと財政余裕額の増収の根拠として、主なデータは以下表1の通りです。

注1HP原稿20231月20日項目②を参照

 

 表1.デンマーク経済指標20212030年(抜粋)

項目

2021

2022

2023

2024

20252027

202820230

GNP

4.9

3.8

0.6

1.4

0.7

1.1

個人消費

4.2

-2.3

0.5

1.3

2.4

2.1

輸出

8.0

8.6

3.1

3.7

2.1

2.4

輸入

8.0

4.2

0.5

2.8

4.0

3.1

時間給(伸び)

2.6

3.6

4.4

5.3

3.4

3.1

消費者物価

2.1

7.4

4.3

3.0

2.2

1.9

対GNP 貿易収支

9.0

13.1

8.4

8.5

7.4

4.2

対GNP個人の金融預金

5.5

10.0

6.8

8.2

7.6

4.8

(kilde: Danmarks Statistik, Økonomiske Redegørelse, maj 2023)

上記表1で見る通り、今年2023年から、デンマークの就労者の賃金は、物価高の見通しを越え、実質賃金が増えることが解ります。2024年の賃金に関し、今年の春、労使間において向こう2年間(2024年から)のベース・アップ率を11%と決めたことも表1の根拠値としてみることが出来ると思います。2023年デンマークの公務員の平均時給額は約257クローネ(1クローネ約20円)民間会社の平均時給額は約279クローネとなっています。公務員の約70パーセントは女性で、市町村及び州職員の80パーセントは女性となっています。国会公務員の男女の比率は各50パーセントとなっています。デンマークの給料は職種別になっています。その中から地方公務員の主な職種における給与額の内訳を書き出したのが表2です。

 

表2.デンマークの地方公務員の職種別平均月額給与額(20235月現在)

単位:クローネ(1kr.20円)

職種

基本給

手当など

年金(注2)

総額

20179

教員

30,300

9.900

7,000

47,200

41,885

州の看護師

29,300

9,100

4,900

43,300

37,933

ソーシャルカウンセラー

32,300

3,400

5,500

41,200

36,565

社会教育者

28,600

6,900

4,900

40,500

35,749

介護スタッフ

26,600

8,600

4,400

39,600

32,308

児童教育者

28,200

5,700

4,900

38,700

34,550

介護スタッフ補佐

24,800

7,900

4,000

36,800

33,614

児童教育補佐

23,200

2,300

2,500

28,000

25,650

(Kilde: Hvad tjener en offentlig ansat ?, 31.maj 2023) (注2)年金への積立金

 

2はデンマークの地方公務員の職種別にみた平均月額給料です。小中学校の先生の年金の積立金を含めた税引き前月額給料は、47,200クローネ(日本円で約94万円)となっています。20179月の給与額に比較すると過去6年間において全ての職種において増額されています。表2で見る通り、残業代という項目は無いのは、就労時間が週37時間、殆どの就労者はこの時間内またはこれ以下の時間しか就労していないためです。

 

2で見る通りデンマークの個人所得が増えるため、貯金額も増え、結果として国の税収入も増える、そのことを背景に2030年におけるデンマークの財政余裕額は640億クローネになる見込みとして発表されました。

 

それではこの増えた分の使い道について政府与党案で見ますと国防費に200億クローネに充てる、この背景に2030年におけるNATO間の国防費の目標額は対GNP比2%を目指しているためです。約210億クローネは社会福祉部門, 特に高齢者介護、児童施設や学校の整備、病院などに充てる。その他50億クローネはガン患者対策費に充てるなど、としています。

 

2. デンマークの国家の借金と為替相場について

好景気が続くデンマークは労働賃金の増大と共に税収入も増えているため、国の借金が減っています。GNP(国民総生産)に対し国の借金比率は2019年の33.2パーセントから20231月時点において12パーセントに減りました。デンマークの強い経済を反映し、デンマーク・クローネと外国為替相場についてみますと、2023620日、デンマーク1クローネ1に対し日本円は20.80 円(1年前19.05円)と円安となっています。隣の国ノールウェーとの関係ではノルウェー・クローネ100に対しデンマーク・クローネは63.58クローネ(202262871.97kr。)、そしてスウエーデン・クローネ100に対しデンマーク・クローネは63.35クローネ(202262469.57kr。)と1年前に比べノルウェーもスウエーデンの通貨もデンマーク・クローネに対し安くなっています。この結果、デンマークからスウエーデンに買い物に出かける人たちが増えていると報道されています。

 

日本の経済に関し、202366日付け朝日新聞の報道によりますと、日本の就労者の賃金は消費者物価指数の伸びに対し就労者の給与の伸びは少なく、結果として実質賃金は13カ月連続で減っていると報じられていました。同新聞によりますと現金給与総額において「フルタイムの一般労働者の月額給与額は369468円、パートタイム労働者は約103140円」(朝日新聞記事からの抜粋)。日本の一般労働者の月額給料約37万円はデンマークの就労者に比べ大きな差が出ていることが解ります。また、日本の国の借金額は対GNP202112月の262パーセントから202212264パーセントに増えています。

日本の就労者の賃金を増やし、税収入を増やすための手段として生産性のある国民教育が必要だと思えます。その教育に必要な財源確保として、500兆円とも言われている企業の内部留保金に課税し、また株の売買益への増税があると思います。何れにしましても日本経済の立て直しに向け、国民間における議論の場を数多く設けることだとも思っています。

 

デンマーク・ウアンホイにて

 

2023622

 

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