デンマークの気候温暖化防止対策について(20200108)

2019126日デンマークは世界の国々に先駆け、与野党間*の間で気候温暖化防止対策に向けた政策目標として気候法(Klimalov)を議会で可決しました。デンマークが導入した気候法の概要を紹介します。

目的:パリ協定で推進した地球の温度上昇を1.5度以下に抑制するためデンマークがなすべき行動計画として導入。与野党間*で同意したことは2030年までにデンマークの地球温暖化ガスの排出量を1990**の水準に比べ70パーセント削減すること、地球の温度上昇1.5度の抑制に向け遅くとも2050年における地球温暖化ガスの排出量をプラスマイナスゼロ(klimaneutralitet***)にすることを目標に掲げています。

 

*気候法を推進した政党名:与党 政府(社会民主党)野党:自由党、デンマーク国民党、社会自由党、社会人民党、赤緑党、保守民主党及びオルタナティブ党 で国会議員数の175名の内167名が推進した、気候法を推進しなかった政党は2党(自由同盟と新市民党で議員数各4名)。**1990年の比較年は京都議定書での取決。

*** klimaneutralitet*を意訳しますと、地球温暖化ガス(二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)などの排出量をプラスマイナスゼロにするという意味ですが、デンマークの気候法ではデンマークの国土で吸収できる以上にこれらの量は排出しないということです。例えば。二酸化炭素の排出量を減らすためには、化石燃料を削減すること、二酸化炭素を吸収するための植物や森林を面積を増やさすこと、それによって二酸化炭素の排出量をプラスマイナスゼロにする社会構造に切り替えていこという意味です。

気候への取り組みは地球上における問題で、デンマークが取り組みの先進国として行動を起こし、世界各国に働きかけていくこと。

気候法は概要は以下の通りです。

1.部分目標標と気候行動計画:  2020年中に2025年への中間目標値立案。

2.年間の気候計画と行動義務化:

3.気候機構の組織構成:

4.グローバル報告と戦略:

5.編集方法:

デンマークの与野党が導入した気候法に対しデンマークの地球温暖化ガスの排出量などについて2018年末のエネルギー統計数値について記述します。この数値を基にデンマークの政府野党が導入した気候法の目標が達成できるかどうか、今までの過程と実情について記述します。

 

1.デンマークの一次エネルギー生産量推移(単位:PJ

 

 

1990

  2000

  2005

2010

2015

2016

2017

2018

90-18+/1

原油

256,0

764,5

769,2

522,7

330,7

297,7

289,7

243,6

-4,8%

天然ガス

116,0

310,3

392,9

307,4

173,5

169,7

182,1

155,1

33,7%

再生可能エネルギー

45,5

76,0

105,6

131,3

159,2

158,7

171,1

172,8

280 %

生分解しない廃棄物

7,0

13,7

17,0

17,1

15,7

15,4

16,0

15,1

117 %

合計

424,4

1.164,5

1.311,7

978,6

679,0

641,6

658,9

586,6

 8,2%

表1で見る通り、2018年におけるデンマークの一次エネルギー生産量は1990年のそれに比べ38.2パーセント増えていますが、北海油田からの原油の生産量では4.8%減り、天然ガスは33.7パーセント増えています。再生可能エネルギーの生産量は280パーセント増え、また生分解しない廃棄物によるエネルギー生産量は117パーセントの伸びとなっています。この表の数値から言えることは、デンマークのエネルギー生産は化石燃料(埋蔵量が少なくなって来ている石油と天然ガス)から再生可能エネルギー資源の活用に力を入れ、二酸化炭素の排出量を押さえる施策を採って来ていることが言えると思います。

デンマークの部門別に見た再生可能エネルギーの生産量は表2.の通りです。

 

2.デンマークの再生可能エネルギーの生産量(単位: PJ

 

1990

  2000

  2005

2010

2015

2016

2017

2018

90-18+/1

原油

256,0

764,5

769,2

522,7

330,7

297,7

289,7

243,6

-4,8%

天然ガス

116,0

310,3

392,9

307,4

173,5

169,7

182,1

155,1

33,7%

再生可能エネルギー

45,5

76,0

105,6

131,3

159,2

158,7

171,1

172,8

280 %

生分解しない廃棄物

7,0

13,7

17,0

17,1

15,7

15,4

16,0

15,1

117 %

合計

424,4

1.164,5

1.311,7

978,6

679,0

641,6

658,9

586,6

 8,2%

 

 

2.デンマークの再生可能エネルギーの生産量(単位: PJ

 

1990

2000

2005

2010

2015

2016

2017

2018

90-18+/- 

合計量*

45,5

76,0

105,6

131,3

159,2

158,7

171,1

172,8

280 %

:太陽光

0,1

0,3

0,4

0,7

3,7

4,7

5,1

6,2

6107 %

-風力

2,2

15,3

23,8

28,1

50,9

46,0

53,2

50,0

2177 %

        -地熱

-

-

0,2

0,2

0,1

0,2

0,2

0,1

129 %

バイオマス

40,0

54,0

73,5

92,3

90,1

89,8

92,4

92,7

132 %

:麦藁

12,5

12,2

18,5

23,3

19,8

19,7

20,2

17,6

41,1 %

-ウッドチップ

1,7

2,7

6,1

11,4

14,7

17,1

19,4

22,4

1198 %

-

8,6

12,4

17,7

23,8

21,9

22,5

22,5

22,2

154 %

-木材ペッレット

1,6

3,0

3,3

2,4

2,7

2,9

2,8

2,7

73,2 %

-廃材

6,2

6,9

6,5

8,5

11,2

8,5

7,7

9,1

47,2 %

-生分解廃棄物

8,5

16,7

20,8

21,0

19,1

18,8

19,6

18,5

117 %

-バイオオイル

0,7

-

0,8

1,9

0,6

0,3

0,2

0,2

-68,5 %

バイオガス

0,8

2,9

3,8

4,3

6,3

9,0

11,1

13,4

1684 %

熱ポンプ

2,3

3,3

3,7

5,6

8,0

8,9

9,1

10,2

351 %

*デンマークの水力発電量は省略し、単位をTIからPJに、よって合計量は一致しない。   出典:12ともEnergistatistik 2018

表2の数値から、風力発電の発電量は2017年に比べ2018年が減ったのは設備が減ったのではなく風力エネルギーが少なかったためです*2018年太陽光発電の生産量が増えた理由は1947年以来の太陽の照った時間**が長かったことが上げられています。2018年における風力発電量は約139億kWhで、太陽光発電量は95千万kWhになっています。

*デンマークの風力発電設備量の推移:20155,065MW, 2016 5,229MW, 2017 5,468MW, 2018 6,104MW. なお、2019年の発電量は160億kWhで、2018年に比べ15.1%増。

 

**デンマークの日射量の推移を多い年代順でみますと20181920時間、19471878時間、20031869時間、19591854時間、20051846時間、20081821時間と2000年時代に入り日射量が増えていることが解ります。

図1.デンマークの電力消費に対する太陽光発電と風力発電の割合の推移

 

3.デンマークの再生可能エネルギーの輸入量推移(単位:PJ) 

 

1990

2000

2005

2010

2015

2016

2017

2018

合計

-

2,5

18,9

39,5

52,6

60,7

76,5

75,6

内:薪

-

-

2,0

2,9

2,5

2,6

2,6

2,6

ウッドチップ

-

0,3

1,5

4,9

2,8

3,3

5,5

6,3

木材ペッレット*

-

2,2

12,8

27,7

34,2

41,8

55,0

52,9

生分解廃棄物

-

-

-

-

2,7

2,9

2,2

2,7

バイオエタノール

-

-

-

1,1

1,8

1,6

1,9

1,8

バイオディーゼル

-

-

2,6

2,9

8,5

8,4

9,2

9,3

(出典:Energistatisktik )

* 2018年における木材ペッレット消費量は約320万トンで内国内の生産量約20万トン、残りは輸入となっています。デンマークの木材ペレットの消費量が増えている背景に化石燃料の削減に向けた課税政策が働いているためです。その例として暖房や給湯用として灯油と使った場合と灯油から木材ペレットに熱源を替えた場合の経済的メリットを試算しますと以下の通りです。

灯油の消費量2,500リットル*を木材ペレットに替えた場合、木材ペレットの消費量は5,250㎏となります。つまり、木材ペレットの熱量は灯油に対し約半分ということです。一方値段を比較してみますと、2,500リットルの灯油代は約27,900クローネで、木材ペレット5,250㎏の約11,500クローネの約2.4倍になっています。このようなこともあり、デンマークでは灯油消費量が減り、木材ペレットの消費が増えています。

*デンマークの平均的一戸住宅の暖房と給湯源としての年間消費量。

4.デンマークの再生可能エネルギー輸出量推移(単位:PJ)

 

1990

2000

2005

2010

2015

2016

2017

2018

バイオディーゼル

-

-

2,6

2,8

1,0

1,2

1,8

2,1

(出典:Energistatistik

 

5.デンマークの再生可能エネルギー消費量推移(単位:PJ)

 

1990

2000

2005

2010

2015

2016

2017

2018

90 -18 +/-

再生可能エネルギー消費量

45,5

78,5

121,9

168,0

210,4

218,3

245,4

246,3

+541 %

(出典:Energistatistik

5、で見る通りデンマークの再生可能エネルギー消費量は1990年の45.5PJから2018年の246,3PJに増え、この間における伸び率は約5.4倍となっています。

 

デンマークの再生可能エネルギー消費量が増え続けた結果として、二酸化炭素の排出量は1990年を100とした場合2018年は62となり、約38%の削減となっています。またデンマークが排出する地球温暖化ガス排出量の実績は1990100とした場合201832%の削減となっています。

 

下記図2:エネルギー消費における二酸化炭素の排出量推移

単位(百万トン)青線:実質、赤:調整後*

2018年実質3450万トン、対1990年約35%削減

2018年調整後:3790万トン、対199038%削減

*調整後とは気温変動と電力の輸出入を組み入た数値。

出典:Energistatistik 2018

 

下記図3:燃料別に見た二酸化炭素の排出量推移

単位(百万トン)

石炭とコークス(灰色)天然ガス(黄色)石油(青色)生分解しない廃棄物(紺色)

1990年に対し2018年石炭コークスの消費量は約70%削減し、天然ガスは約47%増となっている、デンマークのエネルギー政策は化石燃料を削減に努めることで、二酸化炭素の削減に繋げていることがこの図表で読み取れます。

出典:Energistatistik 2018

図2と図3は下記の通りです。

まとめ:

2019126日デンマークの政府与野党が世界の先駆け、地球温暖化防止への対策として「気候法」を導入しました。それによりますと、デンマークは2030年までに地球温暖化ガスの排出量を1990年の量に対し70%削減することを目標にしています。2018年時点のおけるデンマークが排出した地球温暖化ガス量は1990年のそれに対し32%の削減の削減になっています。ということはデンマーク政府与野党は2020年から2030年までの10年間に残る38%削減することを目標にしています。この目標に達成するための計画案は今年2020年に立案されることになっていますが、目標達成には国民全員の参加が必要で、その中で自動車や飛行機など運輸部門における化石燃料の削減が大きな課題ではないかと思っています*

*2018年全エネルギー消費量644.5PJに対し運輸部門の占める割合は約35パーセントの222.7PJとなっている。

デンマークが排出している地球温暖化ガスの割合は世界全体の0.11%で、2013年の数値では5550万トン、一人当たりのそれは約9.38トンとなっていました。そして2016年のそれは8.76トンと減っています。

 

下記図は欧州諸国(EU諸国)における1990年を規準年とした地球温暖化ガスの排出量の推移と2030年における見通しです。

 

出典Energistyrelsen

* EU-15 Group of 15 EU countries: Austria (AT), Belgium (BE), Denmark (DK), Finland (FI), France (FR), Germany (DE), Greece (EL), Ireland (IE), Italy (IT), Luxembourg (LU), Netherlands (NL), Portugal (PT), Spain (ES), Sweden (SE) and United Kingdom (UK).  EU 13: Bulgaria (BG), Croatia (HR), Cyprus (CY), Czech Republic(CZ), Estonia (EE), Hungary (HU), Latvia (LV), Lithuania (LT), Malta (MT), Poland (PL),

Romania (RO), Slovakia (SK) and Slovenia (SI)

 

今後デンマークの気候法は世界のモデルとして導入されるかどうか、デンマークの削減目標に合わせた計画案を待って、引き続き論考したいと思っています。

       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

202018日 デンマークウアンホイ

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