デンマークの国王の交代、中学校選挙について(20240210)

1. デンマークの国王の交代について

今年1月14日マーガレット二世が退位し、王子フレデリック十世が即位しました。マーガレット王女が即位したのは1972年1月で、王女として50年間在位しました。本来デンマークの国王の交代は他界を持って交代するのですが、マーガレット二世はその伝統に反し、昨年(2023年)12月31日、恒例の国営テレビ放映による年末のご挨拶を利用し、新年を迎えた1月14日に退位することを発表しました。マーガレット二世は王位交代の理由として健康を害し任務を果たすことに懸念を持ったためと語っておられました。マーガレット二世の誕生日は1940年4月16日で、今年で84歳になります。因みに、デンマークの歴史上にマーガレット一世が存在します。マーガレット一世は1387年から1412年まで在位した王女で北欧三国(現在のノルウェーとスウエーデン)を統治していました。デンマークの王家は歴代国民の多大な信頼と支援(国民の王家支持率は85%とも言わている)を受けています。その事もあって、1月14日(日)の午後3時の国王の即位式には、朝早くから式典に参列する人たちが全国からバスや鉄道を使って集合しました(全国から約17万人が参列したと報道された)。デンマーク国営テレビ放送局は朝7時から夜まで実況中継をはさみ、王家を支える人達の対談など含め放映してました。国王の即位式は、国の伝統に基づき国会のバルコニーを使い、首相による国王の即位宣言(proclamation)で施行されました。

 

デンマークの王家が国民から多大な信頼と支援を受けている背景の一つは、長い歴史を持つデンマークの王家は(新任のフレデリック十世は西暦810年頃に就任したGudfredバイキング王から数え55代目にあたる)、外交面への支援以外に諸外国との産業及び文化面からの活動を積極的に支援していることが上げられると思います。その一例として、即位して間もないフレデリック十世は、1月31日デンマークの産業界(59社)の代表者たちと共にポーランドを訪問、「緑の変換(デンマーク語でGrønne omstilling  と呼ぶ)」のミッションに参加、ポーランド政府との間で覚書状(メモランダム)に署名してきました。この覚書で交わされ商談の中に、石炭、石油、天然ガスによるポーランドのエネルギー供給体制を緑のエネルギーを供給に替える、そのため、デンマークからエネルギー技術として26億クローネ(約540億円)輸入する、バルト海域への洋上ウインドファーム建設計画では2030年までに1190万kW, 2040 年には1800万kWの設備を設置する、その他デンマークの再生可能エネルギー源による地域暖房技術の輸出などが含まれています。デンマークの国王の産業ミッションは、結果としてデンマークの産業の活性化に繋がり、その事も含め、国民の信頼と支援に繋がっていると思えます。デンマーク国王に支払われる経費はデンマーク憲法10条の規定で国会で決めますが、その額は(2023年)マーガレット二世の場合約760万クローネ支給され、王子には月額約187万クローネ*(内10%が王妃宛)支給されていました。1月14日王子が国王になったことを踏まえ、国王への経費はマーガレット二世に支払われていた額と同額になる見込みです。恐らく2025年には増額されるのではないかと筆者は見ています。いずれにせよ、筆者はデンマークの王家は国にとって国民をまとめる役目と国の経済の安定につなげる役割を果たしていると思っています。* 1クローネ約21.6円(2024年2月9日での換算レート)。

 

2. デンマークの学校選挙について

デンマークの中学生を対象にした学校選挙については、既にHPで紹介しています。細かいことは以前のホーム・ページに記述していますので(注)、興味のある方には参考にしていただくことにし、今回のホーム・ページでは学校選挙で取り上げられた政策案と選挙結果についてのみ、記述します。(注)HP原稿番号20211020及び20190201で導入に至る経過及び仕組みや過去の結果など。赤字をクリックすると、簡単に見ることができます。

 

今年2024年2月1日に、第5回目の選挙が実施されました。デンマークの11政党のジュニアを選出する選挙での有権者数は8年生から10年生で7万1千人でした。

 

2024年1月13日、首相が「学校選挙」(skolevalg)を公示 選挙運動期間は3週間です。

国が取り組むべき政策案は全部で24で、その中の一部は以下の通りです。なお、( )内のアルファベットは政党の記号で、下記表1に政党名を記述しました。政策導入案に政党名の記載がない政策案件は、全党で討論する課題です。

・男女とも兵役義務導入(M)

・運転免許書は17歳から導入(Æ,I)

・肉及び酪農製品の値上げ

・18歳以下の収入への非課税(A,V,Æ,I,C)

・外国国籍の犯罪者の国外追放(O)

・就労時間の短縮

・自動車の登録税廃止

・犯罪者への重罰導入(A,V, Æ,C,O)

・公共交通機関の無料化(F, Ø, Å)

・高所得者への重課税

・国防予算の増額

などです。

上記の政策導入案の中から、「男女とも兵役義務|について加筆します。デンマークでは、18歳以上の男性は4か月の兵役教育を受ける義務があります。女性に関しては兵役教育を受ける義務ではなく、希望者のみとなっていました。それがロシアのウクライナ侵攻の影響を受け、女子への兵役教育の義務化を議会で検討しています。北欧諸国の中でノルウェーは2015年に男女の兵役教育を義務化し、スウエーデンは2018年に男女の兵役教育を義務付けました。フィンランドでは年間2万人の軍人を教育し内2000人が女性となっています。

デンマークの2024年の国防費に関しては国家予算の歳出額で6番目に多く、歳出総額は275億1,080万クローネで歳出予算総額の3.1%になっています。デンマークの国防費の予算額はロシアのウクライナへ侵攻が始まる前、例えば2019年262億1200万クローネ、2020年は271億8700万クローネでした。それがロシアのウクライナ侵攻によるデンマークのウクライナへの弾薬など軍事物資を支援していることで増額していることが解ります。

 

国防に関し、日本人の殆どは戦争が起きも国や地域のために戦うことはしないと答えていますが、その考え方(思想)はいつどこで育ったのか、読者(ML)のみなさんに聞きたいと思っています。何故ならば、国家(社会)の一員として暮らしている限り、お互いに守り合う義務と責任があると筆者は思っているためです。解り易く言えば、泥棒に遭い、お金やものが盗まれた場合どうするか、殆どの人は警察に連絡します。国外との治安に関しては、国民全員で守っていかなければならないと思っており、それが国防です。

 

参考までに諸外国における国民の国を守る姿勢に対し日本人の国防への意識が少ないことが解ります。

図1 国防への国民の姿勢         出典:2023年7月14日付け岩手日報

デンマークは含まれていませんが恐らく、他の北欧諸国と同じだと筆者は思っています。

デンマークの中学生は選挙活動を通し、国防予算について語り合う機会をもっていること、などを含め、デンマークが世界の国々の中で豊かな国民生活を維持している背景には、未成年者から国の政治に参加する仕組みを作り実施していることも(国会議員の選出選挙の投票権は18歳から)その理由の一つとして上がられると思っています。

 

表1.2024年2月1日における8年生から10年生による選挙の結果

党名(ジュニア)

( )内政党の党名記号

国会選挙

202211/2

中学生選挙2021

中学生選挙2024

2021年比較

リベラル同盟党 (I

14議席

14

55

41

デンマーク社会民主党(A

50

42

29

13

自由党(V

23

21

18

―3

社会自由党(B

26

15

9

保守党(C

10

26

14

12

赤緑党(Ø

13

12

1

社会人民党(F)

15

14

12

2

国民党(O)

8

9

1

穏健党(M)

16

―(注)

8

デンマーク民主党(Æ)

14

― ()

5

オルタナティブ党(Å)

6

4

0

―4

新人民党(D)

6

 

 計 (筆者集計)

175

    155

    177

 

         (注)この当時政党の登録なし, kilde:skolevalg 2024,

 

 2024年の中学生の選挙で、リベラル同盟党の議席数が急増しました。リベラル同盟とは日本語で「自由主義者の集まり」とも解釈されますが、彼らの考えは、個人の自由を最大に活かす社会の構築です。王家の廃止、納税は最小限、国の国民への関与は出来るだけ少なく、国教の廃止などが政策として語られています。このような考えを持つ中学生が育った(いる)環境は何不自由なく暮らしているデンマーク社会の結果だと思います。2年後の2026年11月国会選挙がありますが、リベラル同盟党の議席数は中学生の選挙並みに増えるか、注目したいと思っています。

 

   2024年2月10日

     デンマーク、ウアンホイにて

     ケンジ ステファン スズキ