デンマークの行政区と、州議会と市町村議会議員選出選挙の結果について(2021年11月24日)

1.デンマークの行政区について

デンマークの今日の行政区は2007年1月1日から施行されたもので、国の下に5つの州と98の市町村になっています。

*以前の行政区は13のアムト(日本の県行政区に該当)の下に271の市町村があった。

 

州行政区分は以下の図の通りで、ユトランド半島は、北、中、南の3つの州に分け、コペンハーゲンが所在するシェーランド島は北と南の2つに分け北部シェーランドとバルト海に所在するボーホルム島は首都圏州、南部シェーランド島とローランド・ファルスター島はシェーランド州に分けました。そしてこの5つの州の中に全部で98の市町村行政区を配備しました。その内訳と人口数は以下の通りです。

デンマークの州行政と市町村行政区数及び人口数

・北ユトランド州、 市町村数11、人口約 59万人

・中部ユトランド州、市町村数19、人口約132万人

・南デンマーク州、 市町村数22、人口約122万人

・首都圏州、    市町村数29、人口約186万人

・シェーランド州、 市町村数17、人口約 84万人

 

①   デンマークの州行政の主な業務は

病院の運営管理(デンマークの病院の殆どは州運営)、汚染土壌監視、地下資源確認、州交通網の運営監督、特殊学級施設運営管理などで、各州議会議員数は41名です。

デンマークの州議会議員の殆どは別に職業をもっている人たちであるため、報酬は限れらており、平均報酬額は年間約118,000クローネ(約210万円2020年例)となっています。

州議長(原語:Regionsformand英訳regional chairman)は専門職のため年間約120万クローネ(約2,160万円)となっています。

 

②     市町村行政の主な業務は

市民・住民への行政サービスという面で、例えば、子供の育児支援、学校教育(幼稚園クラスから10年生まで)の運営管理(注)、高齢者介護、在宅介護、難民移民の受け入れ策、自然及び環境業務、図書館運営管理、大人の障害者介護などです。

(注)高等学校、各種職業学校、及び高等教育は国の管轄下に置かれている。

市町村行政の中の業務の一つに「自然及び環境業務」がありますが、農場の拡張工事、風力発電や太陽光発電の設置に関しての業務のことで、例えば、酪農家や養豚業家が設備の拡張を図る際には、市町村の許可が必要で、許可を出す前に同農場に隣接する住民に、拡張工事への承認・否認の問い合わせがくることになっています。また、風力発電・太陽光発電の設置工事においては個人であれ業界であれ市町村議会で決議し、都市計画に入れることになっています。デンマークは国家政策として2050年までに二酸化炭素排出量プラスマイナスゼロを目標にしていますが、それに合わせ市議会において、大型風力発電の導入また太陽光発電においても数百ヘクタールとも言われる大規模な導入計画が出されています。当然住民の中からは反対者も出ます。反対が出たことで計画を取止めるか否かの判断は市議会議員に任されています。それだけに市議会議員の選出選挙においては、立候補者の市政にへの公約が当選するか落選するかにかかっています。

市町村議会議員の報酬は議会関係の業務で失った収入は補填されるようになっていますが、定額の報酬はありません。

市民の数が8万人を超える市町村における長の報酬額は年間約122万クローネ(約2,200万円)になっています。デンマークの市町村議会の定期会議は通常の業務にある人達の就労時間に合わせ、火曜日の夜となっています。

 

③     市町村財政について(例)

筆者が住む市町村は中部ユトランド州に所在する19の市町村の中の一つでヘアニング市です。ヘアニング市の人口数は約89,000人(2021年)で、18歳~64歳の人口数は約53,000人です。市の2020年財政について見ますと、決算総額は約55億528万クローネ(約1,000億円)です。歳入額は所得税36億4630クローネ(約656億円)、不動産税と法人税4億1730万クローネ(約75億円)それに地方交付税14億8920万クローネ(約268億円)となっています。歳入額の約65.7%が所得税となっています。

 

所得税住民の納税額が大きいか小さいか、比較するために筆者の生家がある岩手県の一ノ関市の納税額を調べてみました。一ノ関市の人口(2021年)は約11万人、で内就業者数は約6万1千人です。同市の2019年における歳入総額は593.6億円となっていますが、その約70%が依存財源で自主財源は30%に過ぎません。自主財源の内訳を見ますと市税収入が120.3億円でその中で市民税額は50.8億円です。残りは、固定資産税59.8億円、その他9.7億円となっています。よって、全歳入額に占める市民税の占める割合はわずか約8.6% (50.8/593.6=0.08556.)。ということが解りました。

 

上記の数値から言えることはヘアニング市の住民が納めている税金額は一ノ関市の住民に比べ約13倍多ということです(656/50.8=12.91%)。

 

この違いはどこから生まれたのか、極論はヘアニング市に住む住民は一ノ関市の住民に比べ、13倍の納税が出来るだけの生産性を上げているということかもしれません。それを可能しているのは何か。デンマークと日本の国民教育の違いからこの差が出てきていると思うので、このことについて機会を見て記述しお知らせします。何れにしても、外から日本社会を見ていますが、日本で今日導入している学校教育制度を大幅に改革しない限り生産性のある国民の育成は出来ないのではないかと勝手に思っています。

 

2.州議会と市町村議会議員選出選挙の結果について

去る11月16日(火)デンマークの州議会と市町村議会議員の選出選挙が行われました。

選出選挙は毎4年に行われ、前回は2017年に実施されました。選出する議員数は5州議会で各41名、98の市町村議会議員数は各市町村毎で異なりますが計2,346人となっています(注)。政党別に見た得票率は以下の通りですが、2017年の選挙に比べデンマーク国民党は前回の選挙に比べ132人減らし、社会民主党が前回の選挙に比べ86人の議員数を減らしました。大幅に増えたのは保守党、新市民党、社会人民党となっています。

(注)市議会議員数は市町村の人口数によって規定され、例えば人口2万人以下は最低9名、最大31名、2万人以上の場合は最低19名最大31名と規定されていますが、コペンハーゲンは55名と規定しています。