1)エネルギー総消費量と二酸化炭素排出量の推移について
下記の図1は、デンマークのエネルギー総消費量と二酸化炭素排出量の1990年から2020年までの推移です(季節調整後の数値)。エネルギー総消費量1990年を100とし、25年後の2020年は85.5%となっています。この間デンマークの人口は約696,000人増えているにも関わらず14.5%(100‐85.5)減らしたことは、デンマークの省エネが進んだということです。
デンマークの省エネが進む中で、二酸化炭素排出量の推移は1990年100とし、2020年のそれは42.6%削減の57.4%になっています。エネルギー消費量の削減に対し、二酸化炭素排出量の削減がより多くなっているのは、二酸化炭素を出さないエネルギー消費にシフトしたためです。デンマークのエネルギー統計の解説によりますと、特に石炭とコークスの消費量は1990年から2020年の間に約80%減らした、と書いていました。因みに化石燃料(石炭、石油そしてLNG)を発電源にした場合の二酸化炭素の排出量は、発電1kWh当たり、石炭867g、石油721g、LNG(Liquefied Natural Gas 液体天然ガス)415gグラムとなっています。
図1では、デンマークが発電燃料を化石燃料から二酸化炭素を出さない自然エネルギー(風力、太陽熱、光)やバイオマス(家畜の糞尿、麦わら、可燃廃棄物など)に切り替えたため二酸化炭素の排出量が減ったことがわかります。
図1デンマークのエネルギー消費量と二酸化炭素排出量推移
赤線:季節調整後の総エネルギー消費量、青線:季節調整後の二酸化炭素排出量
2)デンマークの発電量について
デンマークの電力消費量は年間約339億kWh(2020年)となっています。この内国内電力消費に占める再生可能エネルギー源の割合は計68%で、内訳は風力発電47%、バイオマス15.1%、その他(太陽光、バイオガスなど)5.9%です。2020年時点におけるデンマークの風力発電設備量は陸内4,559MW、洋上1,701MW、計6,259MWで2019年の6,103MWから若干伸びています。1990年時点のおけるデンマークの風力発電設備量は陸内のみの326MWでした。その後洋上も含め30年間かけ後洋上も含め6,259MWに増やしたということです(デンマークで洋上ウインドファーム始めたのが1992年)。
図2.デンマークの市町村別にみた風力発電設備の導入量
【図2の説明】
2020年におけるデンマークの市町村別に見た風力発電量単位TJ(テタジュール*)
*TJ=277.7kWh
北海に面したデンマークの西海岸に風力発電設備が多く見られるのはデンマークの自然条件として北海(西部及び西北部)からの風が吹いているためです。
筆者が住むHerning 市(ユトランド半島の中心部より少し北)は人口約89,000 人で風力エネルギーの導入量も多く市の政策として環境産業に力を入れている市です。
3)大規模な水素生産に向けた工場建設について
デンマークに1940年創業したHaldor Topsøeという会社があります。この会社は異種触媒を専門とした生産技術会社で、世界の化学肥料の生産における約50%はこの会社の技術を使っていると語られています。従業員数は約2,300人(内デンマーク1,700人)で2020年の売上高は61億79百万クローネ(約1,000億円)となっています。
この会社がHerning市で2024年の創業を目指し、水を電気分解し酸素と水素を作りだすための事業を始めることを発表しました。水の電気分解の電源は、再生可能エネルギーである風力と太陽光の電力を使うと語っています。同社では今後、重機やトラックなどの燃料は水素になると見込み、年間50万kWhに相当する水素の生産を目標にしていると語っています。世界で今日生産されている水素の量は30万kWhと言われており、同社の生産目標値は大規模な設備だということが解ります。同社はHerning市内に工場用地72,000平方メートル確保し20億クローネの設備投資額計上し2024年の創業を目標にしていることを発表しました(Ritzau 23.05. 2022による)。
デンマーク政府はドイツ、ベルギー、オランダ政府との間に2030年に向け洋上ウインドファームから最低6500万kWhの電力を供給?するとの共同発表をしており、Haldor Topsøe社の水素生産においてはこの洋上ウインドファームからの電力も充てにした工場の建設だということで170名の新たな雇用を見込んでいます。
Herning市について加筆しますと、図3.筆者は1995年国際ビジネス情報誌「ジェトロセンサー」に、織物と環境産業の都市ヘアニング Herning (デンマーク)という題名で記述しました。
図3