ロシアへの依存を減らす対策(20220618)

2月24日ロシア軍がウクライナに侵攻し、それから100日が過ぎました。ロシアのウクライナ侵攻の結果として、ヨーロッパ諸国及び北欧諸国はロシアとの経済・文化など全ての交流を取りやめる政策を採りました。その中でロシアの天然ガスや石油の依存を減らすことを決め、その対策としてデンマークが採った政策について記述します。

 

1.     デンマークの北海風力発電の増設計画について

2022年5月18日デンマークのエスビア市(Esbjerg)においてデンマーク、ドイツ、オランダそしてベルギーの4か国首脳が、2050年に向け北海の洋上ウインドファームの設備を今日の約770MW*から最低1億5千万kW(150GW) に増設するという基本計画を結びました。

* Horns Rav I (2002年起動) 160 MW (80基),Horns Rev II (2009年起動)209.3 MW (91基)、Horns Rav III (2019年起動) 400MW(49基)。

 

図1の説明:デンマークの増設計画は、2030年までに9~13GW*に増設し2050年には35GWに増設するということです。そしてデンマーク、ドイツ、オランダそしてベルギーの4か国を含めた設備量の目標は2030年65GWで 2050年には150GWの設備に増設するという基本計画を結びました。GW = 百万キロワット

150GWの洋上ウインドファームの設備投資額は1兆クローネ(約20兆円)見込み発電量は欧州の家庭約2億3千万世帯の電力消費量に当たると発表しています。

  図1.

 

*北海を含めた2022年6月現在におけるデンマークの全海域における洋上ウインドファームの設備量:15か所計2,298.1 MW(約2.3GW)。

デンマークは洋上ウインドファームの建設及び運営管理に関し30年のノウハウを所持しまた世界の風力発電製造をリードするメーカーとしてベスタス(Vestas )及びシーメンス・ガメサ(Siemens Gamesa) の両社が所在することからして政府指導による風力発電の増設には大きな期待が寄せられています。

 

2.デンマークの天然ガス供給について

2022年6月1日、ロシア政府はデンマークへの天然ガスの供給を止めました。供給停止の理由はロシア政府がデンマークの天然ガスの輸入元であるウアステド(Ørsted)に対しガス代の支払いをロシアの貨幣ルーブルを指定し、その要請にウアステドが、応じなかったためです。デンマークのロシアからの天然ガスの輸入契約では2011年から2030年まで年間20億m3輸入すること、支払いはドル建て、しかしドル建ての支払いをロシアがルーブルに変更したことを理由にウアステドは支払いを拒否、結果としてロシアはデンマークへの天然ガス供給を停止しました。

デンマーク政府はロシアからの天然ガスの供給が停止したことで、特に問題としていません。理由はガスの備蓄があること、北海油田からの天然ガスの供給が見込まれること、その他デンマークにはバイオガスプラントがあることです。

デンマークはオイルショックの教訓を活かし、農家が独自にバイオガスプラント(バイオガスの中身は60~65%メタンガス、残りは二酸化炭素)の導入を図りそのノウハウの蓄積がもとになり、今日(2022年6月)デンマークのバイオガスの殆どは地域暖房の熱源となっています。その他にデンマークには国営のガス供給事業団EVIDAが所在し、この事業団体が全国のガスの供給と運営管理をしています。

  図2.