コロナ感染状況 第6報(コロナパスポート他)   2021年5月17日

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1.   デンマークにおけるコロナ感染状況とコロナパスポートについて

2021年5月14 日付け、デンマークのコロナ感染者の累積数は262,159 人で、一か月前の241,007人から21,152人増えました。死者数の累積は2,499人でこの一か月で2,452人から2,499人と47人増えました。また、5月14日時点での入院者数は163人、内集中管理患者数33人、人工呼吸器患者23人で、入院者数は減って来ています。デンマークにおける感染者数の動向を見ますと、一日当たりの感染者確認数は、700人前後の増えたり減ったりですが、4月に入ってから感染者数は減って来ています。その背景には、感染を防ぐため、学校閉鎖を始めとした大規模な住民の行動制限を導入したこと、昨年の12月27日からワクチンの接種を始めたことです。デンマーク政府議会は感染者数の動向をみながら、学校を含め各種業界の開店制限また住民の集会人数の制限など活動を規制してきました。感染者数が減って来たことから、4月14日デンマークの政府与野党間において、活動制限を緩和することを決めました。その緩和策では、以前に決めていた、レストラン、飲み屋、カフェの開店日の5月6日を繰り上げ、4月21日から、予約とコロナパスの提示を条件に開店が出来ることなった他、会合の人数は屋内の場合5人から10人に増やし、屋外の場合は10人から50人まで、コロナパス無しで集合出来ることを決めました。その他にはサッカー試合での観客数は500人までと枠を広げました。国外への旅行も緩和されカナリア諸島、マルタ島への渡航もできるようになりました。

但し、市町村において、コロナ感染者数が10万人当たり250人に達した場合、自動的に行動制限と各種施設やサービス業を1週間閉鎖することにしています。

デンマークにおける最低1回ワクチンの接種を受けた人の数は4月15日時点で百万人を超え、5月14日時点で約1,606,633人と約60万人増え、また2回の接種を受け、接種を終えた人の数はこの間488,202人*から約50万人増え976,027人となり総人口の16.7%がワクチン接種を終えました。

*人口数約584万人の8.4%に当たる.

コロナワクチン接種を2回受けた人はコロナパスポートを受け取ることが出来(デジタル化)各自でプリントアウトするか、携帯電話に記憶させるかが出来るようになっています。

  

筆者のコロナパスポート、デンマーク語、英語、ドイツ語で書いています。ということは国内外でのサービスを受ける際のワクチン接種を受けた証明書類として利用できるようになっています。

 

2. コロナ感染によるミンクの殺処分とエネルギー化について

2020年12月「風のがっこう便り」で、デンマークは世界で最もミンクの毛皮を生産している国だと書きました。そして北ユトランド地方のミンク農家でコロナ感染が発覚し(デンマークではクラスター5と呼ぶ)、感染が確認されたミンク農家のミンクを全部殺処分し、感染が確認された農家から 7.8 キロメートル周辺のミンクも全て殺処分にし、さらに2020年11 月 4 日デンマーク政府は全てのミンクを殺処分することを決めたと記述しました。このことについてその後の経過を記述します。

昨年11月時点でのデンマークのミンク肥育農家数 1,137 戸、肥育しているミンクの数 は 1500 万~1700 万匹と言われ, デンマークの輸出品目の一つになっていました。デンマークで殺処分したミンク数は約1,540万匹、その内の約550万匹はDaka Denmark A/S* と可燃廃棄物コージェネ発電所で処分していました。また当時処理できる設備が見つからなかったことから4百万~5百万殺処分したミンクは中部ユトランド地方2か所の地中に埋めていました。

*Daka Denmark A/S 1948年に食肉解体協同組合が食肉解体から出る残渣を利用するために設立した協同組合。

コロナ菌の潜伏期間は6か月と言われ、その期間が過ぎた2021年5月14日から埋めていたミンクを掘り起こし、焼却処分する試験的作業が始まりました。腐敗が始まったミンクを掘り起こす過程や焼却場まで運搬する途中における悪臭への懸念が、住民などから問われての作業が始まったわけですが、今の所、悪臭に関する問題は語られていません。

焼却するミンク5百万匹の総重量は約15,000トンとも言われ、デンマーク全国13か所の可燃廃棄物コージェネ発電所で一般可燃廃棄物に混ぜて焼却処分することにしています。本格的焼却処分に入るのは5月下旬と言われ、そして計画では6月下旬には全ての焼却が終わると発表しています。

政府はこの焼却を含めた作業費として1億5千万クローネ(約27憶円)計上しています。つまり、デンマークではミンクの死体もエネルギー政策の中に含めて処理するということが言えると思います。何故ならば、ミンク1トン当たりから一般廃棄物約2トン分の熱量が採れ得ると言われているためです。

下記図1は殺処分し掘り起こしたミンクを焼却する13カ所のコージェネ発電所の場所、図2はその中の一つで、MECコージェネ発電所*の外景です。

*図1ミンク埋立地と13カ所の焼却所の場所(赤丸)

 

図2その一つであるMEC コージェネ発電所の外景

MECコージェネ発電所の焼却容量は可燃廃棄物年間約16万トン* *, 麦藁約3.2万トン、ウッド・チップ約2.8万トン、バイオガス約3.5Nm3 ,これらから約4万世帯分の電力供給と、16~22,000世帯に熱供給しています。

* MEC コージェネ発電所は「風のがっこう」の研修での見学施設に入っている。

* *内訳:産業界58%、家庭ごみ42%、4㎏の可燃廃棄物の燃料の価値は石油1リットルと同じ。

 

   

写真は埋めていたミンクを掘り起こす作業と掘り起こし直後の跡地(出典:Jyllands-Posten)

 

3.コロナ感染問題による国家財政への影響について

デンマークでは2020年3月11日にコロナ感染問題への対策が講じられ、国民生活の行動が制限されてきました。それだけに国家経済への影響が懸念されてきたわけですが、今の所デンマークの場合、他のEU諸国に比べ、その被害が少ないと言われています。数値を基に2020年の経済動向特に財政と国民生活について記述します。

①  税収入について

2020年におけるデンマークの税収入は2019年に比べ、僅かながら増えています。その中で下記表1.で見る通り所得税、消費税が増え、法人税が減っています。

表1.デンマークの納税額と主な納税額項目(単位:10億クローネ、約180憶円)

 

納税額計

所得税

消費税

法人税

2018

1,008.0

626.0

217.1

58.3

2019

1,089.2

704.7

221.2

68.4

2020

1,093.0

705.0

224.0

60.9

 

     (出典:デンマーク統計局)

表1,から言えることは、デンマークのコロナ感染による各種施策が、国の税収には大きな影響は出ていないことが言えると思います。その背景には、職を失った人たちもいたわけですが、国民の旅行や飲食など出歩くことが制限されたため、そのお金が住宅の整備、別荘や住宅の売買などに使われてたため、職人(大工、左官など)の仕事が増え、また不動産業界が多忙になったことによる所得税が増えたこと、コロナ感染の影響が消費を抑えることにならなかったことが言えると思います。一方、法人税が減った理由の中に、国民の移動制限があったため、飲食業界、観光業界の売上高が減ったことが言えると思います。

 

②  国家経済を支える消費について

社会福祉国家と呼ばれているデンマークでは、18歳以上の居住者の経済面の支援は国または行政の業務となっています。そのこともあり、国家予算の約75%は社会福祉に充てられています。2021年1月時点における国民年金で生活している人の数は約110万人、早期年金で生活している人の数は約22万人、生活保護を受けて生活している人の数は約12万人、これらの人たちには国から生活費が出ています。国民年金生活をしている人達に「支給されている国民年金額で生活できているか」を問った世論調査によると約8割の人たちは生活できていると答えています。

デンマークに居住している移民の数は約80万人、この内の約50万人は西洋諸国以外からの移民だと言われています。西洋諸国以外から移住者の就業率は西洋諸国からの移住者に比べ低いため、国がその人達の生活を支えていますが、その額は年間約330億クローネ(約6,000億円)になっていると言われています。

デンマークでもコロナ感染の拡大を防ぐため、既に触れていますが住民の移動制限や飲食店、床屋、映画館などのサービス業界の閉鎖など経済成長へのマイナス要因となる施策が取り入れられてきました。それでも、デンマークの場合、18歳以上の居住者の生活費は税金で賄うという国の政策により、経済的不安の無い生活ができるため、消費を生み、結果的には、納税額(消費税)が増えていると思っています。

 

   2021年5月 デンマーク、ウアンホイにて

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