風のがっこう便り2012年12月

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『風のがっこう』便り2012年.doc
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今年2012年も大変お世話になりました、心からお礼申し上げます。

今年の主な日本での活動を振り返りますと、1月は宇都宮大学、作新学院大学、白鴎大学の合同合宿での講師を務めたのを皮切りに、鹿児島市での講演と富士国際旅行社での勉強会、2月は宮津市、篠山市、近江今津、大阪、淡路国際シンポジュームでの講演、6月は富士国際旅行社での勉強会と明治学院大学での講義、7月は秋田国際フォーラムでの講演を行いました。寄稿した紙誌は、「婦人通信」「年金者しんぶん」「ランドスケープ研究」「AFCフォーラム」で、主にデンマークの再生可能エネルギー導入策についてでした。またデンマークで5回の研修を開催し、計66名の方々の参加をいただきました。講演や勉強会を企画していただきました関係者の皆様、寄稿原稿のご依頼いただきました方々に重ねてお礼申し上げます。

 

合同出版社から出版していただきました3冊の内『デンマークという国』は研修生の教材として使われていることもあり、初版からカウントしますと現在までに1万部印刷され、20083月に刊行した『なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか』も現在までに    1万部印刷され、さらに20104月の『デンマークが超福祉大国になったこれだけの理由』も現在のところ4,000部印刷されました。また、2010年(株)角川SSコミュニケーションズから新書として出版していただいた『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』は今年の2月と11月に増刷され計11,000部印刷されました。私の本をお勧めいただいた方々、読者の方々に感謝いたしております。デンマークの社会福祉、エネルギー問題について関心をもたれている方々が多くいることを感じております。これからも「デンマークという国」について紹介する文書を書いていきたいと思っています。

 

再生可能エネルギーの増設に力を入れるデンマーク:

① 今年の3月デンマーク政府与野党間で、風力発電の目標を決めました。それによりますと、2020年におけるデンマークの電力消費量の50%に当たる180億kWh(キロワット時)の電力を風力発電で供給することになります。この計画目標を達成するため、2020年までに新たに陸内に500MWの風力発電所を設置し、洋上に1,000MW増設(デンマークの洋上ウインドファームの設備量は2012年末で約127万kWになった)、それに加えて沿岸(岸から4kmの沖合いを基準)に500MWの風力発電機の設置(6の設置場所決定済み)することになっています。洋上ウインドファームに関しては北海の第3次増設工事として40万kW201211月現在約37万kW稼動中)と新規にバルト海域に60万kWを建設することを決めました。デンマークの今年9月末現在の風力発電の設備は4,964基、総出力約400万kWとなっています。201110月から2012年9月までの風力発電機による発電量は、電力消費量(約340億kWh.)の約30%当たる約104億kWh.となっています。

 

② 風力発電事業と市民参加への規定について

デンマークの風力発電事業においては市民参加が義務付けられており、陸内に設置する風力発電の場合、すべての事業主は風車を設置する場所から4.5キロメートル内に居住する住民に総設備量の最低20%を提供する義務を負い、沿岸ウインドファームの場合、風車までの距離16キロメートル内に住む住民に対し、事業主は総設備量の20%を提供する義務を負いました。このように沿岸に設置する風力発電機のすべてが住民参加の対象となりました。今年になって風のがっこうに隣接する場所にも新規の風車がたくさん建設され、その都度住民に「市民風車」の参加への募集案内が出されました。標準的風車への投資額は一口当たり30004000クローネ(約45千円~6万円)ですが、投資の利回りが10%を越えること、売電収入7,000クローネまで無課税ですから、投資枠は直ぐ売り切れています。デンマークで風力発電の導入が進む背景には法的に市民参加を義務付けたことも大きいと思っています。

 

 デンマークの風力発電開発を支援する風力発電機試験場の開設

デンマーク政府・与野党は20106月デンマークの風力発電国としての主導権を保持することを目的に、大型風力発電機の試験場の建設を決めました(大型風力発電機用試験場に関する201064日付け法律第647号)。試験場となるのはデンマーク北西部Thisted という町から約北東20km離れた森林地帯のØsterild Klitplantageと呼ばれている場所で、全部で7基の風力発電機のテストが出来る用地を確保しました。設置できる風力発電機の羽の突端までの高さは最大250メートルまでと広大な試験用地を確保しています。

 

④ 洋上用風力発電機(6MW)の設置

 この試験場に最初に設置された風力発電機はシーメンス・ウインド・パワー(元デンマークの風力発電機メーカーボーナス、2003年シーメンスが買収)の6000W(6MW)で同工事は今年の825日に終わりました。この発電機のブレードの長さは世界最大の75メートルでローターの直径が154メートルあります。タワーの高さは120メートルでブレードの突端までの高さは197メートルになっています。シーメンスは今年中(2012年)にもう一基設置すると発表しています。なお、シーメンスによると現在テストに入った6MWの風車は、すでに300台の注文を受けているとのことです。世界最大の風力発電機メーカーVestas Wind System社は2014年を目標にこの試験場に7MWの風力発電機を設置する計画を発表しています。現在、この試験場に申し込みしているメーカーの中には中国のメーカーも入っているとのことですが、全部で7基設置できる施設の内2基分については、予約が入っていないとのことなので、日本のメーカーの参入も可能です。

 皆様にとって新しい年が良い年でありますようお祈りいたします。

 それでは、良い年末年始を迎えてください。

 

ケンジ ステファン スズキ

Kenji Stefan Suzuki

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