進学先と教育費について(2021年9月1日)

2021年に、職業に付くための教育機関に進学した学生数は67,425人でこの内の約24%に当たる16,040 人が選んだ教育部門はSTEMと呼ぶ、技術者教育部門です。ここで:

S: Science, T: Technology, E: Engineering, M: Mathematics  の略です。

 

デンマークは世界の中でも持続可能な開発達成(SDGs)の国としてトップに位置していますが、その背景には、国家の持続可能は開発に必要な人材の教育をしているためだと思います。その教育とは上記に記載したSTEM学部(学科)で科学、技術、エンジニアリングと数学を総合的に学ぶことが出来る教育です。この学部(学科)に進学した学生数について2017年から2021年までの推移を見ますと以下の通り毎年1万5千人以上の学生がSTEM学部に進学しています。

 

表1.デンマークのSTEM進学者数推移(2017‐2021年)

単位:人

 

 

2017

2018

2019

2020

2021

STEM進学者数

15,040

15,251

15,448

16,828

16,040

STEM以外の進学者数

50,130

49,692

50,266

52,698

51,385

合計進学者数

65,170

64,943

65,714

69,425

67,425

 

(kilde: Optagelsen 2021)

 

このことで、産業界が必要な新たな人材が育成される他、彼(彼女)らは起業家として国の経済成長につなげているのです。一つの例としてデンマークに所在する風力発電機メーカーにおいても、この種の教育を受けた人たちが必要です。何故ならば、何故風力発電が必要なのか、科学的知識(地球全体の状況を知る)を基にその対策として技術、エンジニアリング、そして数学(数値での説明)が必要であるためです。STEM教育を受けた人たちの価値を判断する材料の一つとして、STEM資格者の給与額です。下記表で見る通り、デンマークのSTEM教育取得者の年収はスイスに次いで2番目に入っています。つまり、雇用者としてこれだけの給与を払っても、雇う価値があるため、ということが言えると思います。

表2.STEM教育取得者の初任給の国際比較

順位、

国名

年間支給額ドル

1.

スイス

75,300

2.

デンマーク

65,000 *

3.

USA

59,500

4.

ノルウエー

57,068

5.

ドイツ

53,309

6.

オーストラリア

47,536

7.

スウエーデン

44,923

8.

フインランド

42,400

9.

フランス

42,062

 

(kilde:jylands-posten ,20,01,2018)

 * 2019年から2021年約8%のベースアップあったので、現在(2021年)はこの額より多くなっている。

 

一方デンマーク国家としてみれば、高い教育費を負担し学生への生活費を払っても、得られる納税額と比較してみれば、利回りの良い投資となっていることが解ります。

 

図1. OECD諸国におけるGNPに占める公共と私的教育費割合(2013年)

(Kilde: Den Samfundsmæssige værdi af uddannelse)

 

  赤いラインは教育費のOECD平均値  グラフのオレンジ部分:私的負担率

上記データは2013年と今から約8年前のデーターですが、国の教育費の負担額のガイドとして使えると思っています。デンマークは上位から5番目に位置しています。但し教育費の公共負担率はコスタリカ、ノルウエーに次いで3番目に多いことが解ります。デンマークの教育費は生活費への支援金も含め全て国庫負担ですので、子どもの親は子どもの教育費に関し何ら心配する必要がなく、国家としては、表2.で記述した通り、教育を受けた子ども達の納税額も多くなるため、デンマークにおいて、教育費は国家からみたら良い投資ということになっています*。

*試算:学生が受け取る生活費(月額)約5,000クローネ×12ヵ月=60,000クローネ

   4年間(修士含め、但し医学部は約6年)×60,000クローネ=240,000クローネ。

 

表2のSTEM教育取得者年間所得65,000ドルx 6.3クローネ=409,500kr, 内年間納税額推定約14万クローネ。学生一人当たりへの生活費投資総額:24万クローネに対し年間の納税額約14万クローネで投資額の回収年は約1.7年間となります。また、STEM教育取得者が40年間働いた場合における納税額は14万クローネ×40年=560万クローネとなります。よって、国が教育費を負担することで、多くの納税額が生まれくることが解ります。その結果、デンマークの国家予算は、東京都の人口数の半分以下ですが、東京都の一般会計予算額約6.5兆円の約2.5倍に当たる17兆円になっています(この内、所得税と消費税の占める割合が約80%)。

 

2021年8月31日

デンマーク、ウアンホイにて、

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