地球温暖化防止対策の動向(2021年10月10日)

 1.70%削減する目標に向けて、国を挙げて進む行動計画

 

2019126日デンマークの政府与野党は世界に先駆け地球温暖化防止に向けた取り組みとして気候法を施行しました。(詳細はHP原稿番号20200108参照(注1

(注1)2030年までにデンマークの地球温暖化ガスの排出量を、1990*の水準に比べ70パーセント削減すること、地球の気温上昇1.5度の抑制に向け、遅くとも2050年における地球温暖化ガスの排出量をプラスマイナスゼロ(klimaneutralitet*)を目標に掲げた政策への取り決め。*1990年の比較年は京都議定書での取決。

もともと、デンマークは気候法を導入する前から、二酸化炭素削減に向けた政策として風力発電、バイオマスやバイオガス発電そしてまた太陽光発電に取り組んできていますが、2030年への具体的削減目標値を出したことで、国全体の削減に向けた行動計画が出てきました。

 

1)デンマーク最大の太陽光発電所

 

太陽光発電所の導入における最近の例として、筆者が住む場所から北西約25キロメートル離れた町(Bur)にデンマーク最大そしてまた北ヨーロッパ最大規模の太陽光発電所が開設しました。

  デンマーク最大の太陽光発電所とは

場所:ユトランド西北部

総面積:222ヘクタール、設備容量:207MWMW1000W

見込み発電量:デンマークの一般住宅の電力消費量*13万世帯分,

*40004500Wh.

所有者:Heartland、電力購入契約者:ベストセラー社など


デンマーク及び北ヨーロッパ最大の太陽光発電所(総面積222ヘクタール)

 

2)農業部門における地球温暖化ガス削減政策について

 

2021105日デンマーク政府与野党は農業界との間で「農業界におけるグリーン改革協定」( 原語:Aftalen om grøn omstilling af landbruget)を結びました。この協定ではデンマークの農業界は2030年までに温暖化ガスの排出量を5565%削減すること。窒素の公害量を2027年までに10,800トン削減すること。この目標を実現させるために政府は農業界に38億クローネ(約690億円)支援するとしています。

気候法で触れたデンマークの二酸化炭素の排出量削減目標を達成するためには、農業界の協力&支援が必要と見做しています。

その背景には国土面積の約62パーセント約260万ヘクタールの土地とそれを基盤した家畜の生産管理をする農業界の温暖化ガス排出量は国全体の排出量の約22.4パーセントを占めていると言われており、政府議会は農業界の排出量の削減無しに削減目標の達成は困難であるとしていると見ているためです。

勿論農業界でも独自に地球温暖化ガスの削減に努めてきており、二酸化炭素換算で見たメタン(CH4)と酸化二窒素(N2O)の排出量は1990年から2017年まで約16パーセント削減したと言われています。

デンマーク農業界の温暖化ガスの削減の課題の一つは農地の耕作による温暖化ガスの排出量をいかにして抑えるか、この中で農業界の排出量全体の約39パーセントは土質(泥炭質土壌)の耕作が原因といわれてるためです。現在対策は泥炭質土壌の耕作を止め、自然地として管理するか緑地化するかです。問題は耕作放棄を要請した場合の補償(面積約108,000ヘクタール)をどうするか、ということで最終的には国が買い取り、緑地化を図ることも検討にいれています。

 

2.国外での温暖化防止策に向けた活動について

 

デンマークの地球温暖化防止対策は国内だけではなく、国外においてもその活動に取り組んでいることです。今現在16か国との間で技術支援と指導に当たっていると言われています。

その例として:中国との間におけるエンジニアリング支援、ベトナムにおけるデンマークのエネルギー政策をモデルとした政策支援、インドとの間における洋上ウインドファーム導入協定、その他、インドネシア、ドイツ、エジプト、韓国など16か国に対し、技術指導、ノウハウの提供などアドバイスに当たっています。

これら16か国の二酸化炭素の排出量は、世界全体の60パーセントに当たると言われており、デンマークが導入している二酸化炭素排出削減策をモデルに、これらの国々の地球温暖化ガスの排出量の削減に結び付けることを目標しています。例えばベトナムにおいてはデンマークのエネルギー活用の効率化をモデルにした同国のエネルギー効率化計画の導入があります。インドとの間においては、洋上ウインドファーム増設協定があり、中国との間ではグリーンエネルギー導入策への支援策協定を締結しています。

そのことで、デンマークは国外への支援を通じ、地球温暖化ガスの排出量の削減に向けた活動をしています。デンマークがこの種の支援活動が出来る背景には、デンマークがオイルショックを教訓にした国内エネルギー資源の活用で得た技術とノウハウが在り、実践していることを世界の国々が評価しているためだと思います。その中には風力発電導入、バイオマスやバイオガス発電と熱利用の技術その他省エネ技術とノウハウなどを所持していることです。

 

3.エネルギー部門の輸出について

 

デンマークの経済界においては上記の国々との技術提携やアドバイスを通し、新たな輸出に繋げているということです。2010年以降におけるデンマークのエネルギー技術及びサービスの輸出額の推移は下記図の通りですが、其の後も増え、2019年の数値で見ますと同部門の輸出額は約1000億クローネ(約1,85 兆円)で総輸出額に占めるこの部門の割合は11.7パーセントになってます


デンマーク、ウアンホイにて

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