再生可能エネルギーと省エネでCO2排出量42.6%削減他(20220528)

1)エネルギー総消費量と二酸化炭素排出量の推移について

 

下記の図1は、デンマークのエネルギー総消費量と二酸化炭素排出量の1990年から2020年までの推移です(季節調整後の数値)。エネルギー総消費量1990年を100とし、25年後の2020年は85.5%となっています。この間デンマークの人口は約696,000人増えているにも関わらず14.5%(100‐85.5)減らしたことは、デンマークの省エネが進んだということです。

デンマークの省エネが進む中で、二酸化炭素排出量の推移は1990年100とし、2020年のそれは42.6%削減の57.4%になっています。エネルギー消費量の削減に対し、二酸化炭素排出量の削減がより多くなっているのは、二酸化炭素を出さないエネルギー消費にシフトしたためです。デンマークのエネルギー統計の解説によりますと、特に石炭とコークスの消費量は1990年から2020年の間に約80%減らした、と書いていました。因みに化石燃料(石炭、石油そしてLNG)を発電源にした場合の二酸化炭素の排出量は、発電1kWh当たり、石炭867g、石油721g、LNG(Liquefied Natural Gas 液体天然ガス)415gグラムとなっています。

図1では、デンマークが発電燃料を化石燃料から二酸化炭素を出さない自然エネルギー(風力、太陽熱、光)やバイオマス(家畜の糞尿、麦わら、可燃廃棄物など)に切り替えたため二酸化炭素の排出量が減ったことがわかります。

図1デンマークのエネルギー消費量と二酸化炭素排出量推移

赤線:季節調整後の総エネルギー消費量、青線:季節調整後の二酸化炭素排出量

 

2)デンマークの発電量について

デンマークの電力消費量は年間約339億kWh(2020年)となっています。この内国内電力消費に占める再生可能エネルギー源の割合は計68%で、内訳は風力発電47%、バイオマス15.1%、その他(太陽光、バイオガスなど)5.9%です。2020年時点におけるデンマークの風力発電設備量は陸内4,559MW、洋上1,701MW、計6,259MWで2019年の6,103MWから若干伸びています。1990年時点のおけるデンマークの風力発電設備量は陸内のみの326MWでした。その後洋上も含め30年間かけ後洋上も含め6,259MWに増やしたということです(デンマークで洋上ウインドファーム始めたのが1992年)。

図2.デンマークの市町村別にみた風力発電設備の導入量

【図2の説明】

2020年におけるデンマークの市町村別に見た風力発電量単位TJ(テタジュール*)

*TJ=277.7kWh

北海に面したデンマークの西海岸に風力発電設備が多く見られるのはデンマークの自然条件として北海(西部及び西北部)からの風が吹いているためです。

筆者が住むHerning 市(ユトランド半島の中心部より少し北)は人口約89,000 人で風力エネルギーの導入量も多く市の政策として環境産業に力を入れている市です。

 

3)大規模な水素生産に向けた工場建設について

 

デンマークに1940年創業したHaldor Topsøeという会社があります。この会社は異種触媒を専門とした生産技術会社で、世界の化学肥料の生産における約50%はこの会社の技術を使っていると語られています。従業員数は約2,300人(内デンマーク1,700人)で2020年の売上高は61億79百万クローネ(約1,000億円)となっています。

この会社がHerning市で2024年の創業を目指し、水を電気分解し酸素と水素を作りだすための事業を始めることを発表しました。水の電気分解の電源は、再生可能エネルギーである風力と太陽光の電力を使うと語っています。同社では今後、重機やトラックなどの燃料は水素になると見込み、年間50万kWhに相当する水素の生産を目標にしていると語っています。世界で今日生産されている水素の量は30万kWhと言われており、同社の生産目標値は大規模な設備だということが解ります。同社はHerning市内に工場用地72,000平方メートル確保し20億クローネの設備投資額計上し2024年の創業を目標にしていることを発表しました(Ritzau 23.05. 2022による)。

デンマーク政府はドイツ、ベルギー、オランダ政府との間に2030年に向け洋上ウインドファームから最低6500万kWhの電力を供給?するとの共同発表をしており、Haldor Topsøe社の水素生産においてはこの洋上ウインドファームからの電力も充てにした工場の建設だということで170名の新たな雇用を見込んでいます。

 

Herning市について加筆しますと、図3.筆者は1995年国際ビジネス情報誌「ジェトロセンサー」に、織物と環境産業の都市ヘアニング Herning (デンマーク)という題名で記述しました。

図3

             (出典:ジェトロセンサー19954月号)

今日のヘアニング市はデンマークの中で最も活性化が進んでいる市と呼ばれていますが、100年前の同市は痩せた農地を耕す人口3,000人の農村でした。その貧困農村が100年の歳月をかけ近代都市を作った背景には、住民と行政そして政治が力を合わせ村の活性化に努めた結果だと思っています。同市には北欧最大の展示場がありますがその規模は屋内外合わせると50万平方メートルあり、毎年20回前後のフェアを開催し国内外から多くの人たちを受け入れています(以上記述記事からの抜粋)。Haldor Topsøe社がヘアニング市に水素工場を作ることにしたのも、同市の企業政策の成果だとも思えます。このヘアニング市の財政について(2020年)は歳入55億5300万クローネ(約1,000億円)歳入の73.2%は自主財政(納税)で財政バランスは4,400万クローネの黒字、同市の積立残高は約6億5300万クローネとなっています。一方ヘアニング市に比べ筆者の生家が所在する一関市は人口11万2000人で財政では歳入626.5億円、内自主財政率僅か26.7パーセントとなっています。この違いはどこから生まれて来ているのか、市民、行政、政治に携わる人たちの是正に向けた活動が期待されるところです。

 

4)デンマークの電気自動車数と充電について

 

デンマークの今年(2022年)3月時点における、自家用車に占める電気自動車の割合は17.5%で、前年同期の8.7%に比べ倍増しました。2022年第一四半期で新規に登録された電気自動車数は5,949台でデンマークでは電気自動車の販売が伸びています。それに合わせ充電箇所も増え、2022年3月末における全国の充電箇所数は6,000か所になったと言われています。

                                  以上

デンマーク ウアンホイにて

スズキ