ロシア軍のウクライナ侵攻によるエネルギー・食料需給への影響(20220428)

1.   デンマークの対ロシア貿易とロシアの天然ガスからの離脱策

 

ロシアのウクライナ侵攻から2ヵ月、デンマークは他の諸国と共にウクライナへの支援を続けています。デンマーク首相は過日ウクライナ首都周辺を訪問(4月21日)ロシア軍が撤退した後を視察してきました。デンマーク首相のウクライナ訪問でデンマークが約束した新たな軍需物資の支援額は6億クローネと語っています。これにより、デンマーク政府のウクライナ政府への軍事支援物資総額は10クローネ(約180億円)になると語っています。軍事物資の支援と共にデンマーク政府及び産業界はロシアとの経済関係を断ち切る政策を採っています。

デンマークのロシアとの貿易についてみますと2021年におけるデンマークの対ロシア輸出額は151億クローネで輸出総額に占めるロシアの割合は1%です。輸入額は177億クローネで輸入総額に占めるロシアの割合は1.3%となっています。また、ロシアのウクライナ侵攻が理由でロシア市場から撤退した企業としては、天井窓などの製造販売をしているベロックス(Velux)温度調節器メーカーダンホース(Danfoss)風力発電機メーカーベスタス(Vestas)ビール製造販売のカールス・ビール(Carlsberg)等があります。また、4月7日の業界紙*によりますと北ユトランドコージェネ発電所はロシアの石炭の使用を中止し代わりにコロンビア、アメリカ、南アフリカ産石炭に切り替えることを発表しました。* Energy Supply 7. april 2022

 

ロシアのウクライナ侵攻によるデンマークの市民生活への影響では天然ガスを燃料とした暖房設備を導入している住宅です。その数は約40万件、天然ガスの暴騰で家計を圧迫していると報じられています。それに対し政府与野党間の間で年収が60 万クローネ(約1,100万円)以下の家庭に対し6,000クローネの暖房費補助を出すことを決めました。

 

一方デンマーク政府与野党は天然ガスを熱源とした40万件の50パーセントの住宅に関し2028年までに地域暖房に切り替える計画をたて、今年中(2022年中)にこれら地域暖房敷設が可能な住宅に通知することを決めました。残る半分の住宅に関しては熱ポンプでの熱供給体制を採り入れことで対処すると語っています。

 

デンマーク政府与野党は4月19日エネルギー自給率を高めるため2030年までに再生可能エネルギー源による電力供給量(風力、太陽)を現在の量に対し4倍幅に増やす政策を発表しました。ということは風力発電設備で見るとデンマークの電力消費量約320億キロワット時に対し2030年までにこの4倍に当たる1040億キロワット時を生産する設備を持つということです。デンマークには世界で1番と2番を競う風力発電機製造メーカーが所在し、それを国が後押ししています。その一つは世界最大の大型風力発電機テストセンターを開設していることです*。

*2010年デンマーク国会は国立風力発電機テストセンター「Østerild」の建設案を議決、2012年10月デンマーク北ユトランドの砂丘240ヘクタールの松林を伐採&取り除き大型風力発電機(羽の突端までの高さ330メートル)7基の試作風車のテストをする場所を開設しました。風車の機能テスト等の責務はデンマーク工科大学 (DTU: Danmarks Tekniske Universitet) が受け持っています。ただ、現地の勤務者は居なく全て遠隔管理です。DTU による現在テスト中の風車のメーカーと機種は以下の通りです。(DTUの情報を基にしたインターネット情報による)

  • EDF RE - GE 150-6 MW.
  • Vestas - V120.
  • Vestas - V136-3,45 MW.
  • Vestas - V150-4,2 MW.
  • Envision Energy - EN-120/3.0 MW.
  • Siemens Gamesa Renewable Energy - SG-DD-167 MW.
  • Siemens Gamesa Renewable Energy - SWT-7,0 MW.
  • Siemens Gamesa Renewable Energy - SG 11.0-193 DD.

上記で見る通りテストを受けている風車は全て大型風車です。

 

なお、デンマーク政府議会は風力発電機メーカーの要望を受け、現在(2022年4月)同センターの拡張工事に向け140ヘクタールの林の伐採及び取り除きを進め、今年の年末(2022年末)頃には洋上用15MWクラスの風車のテストを始めると語っています。何れにせよ、ロシアのウクライナ侵攻によってデンマーク政府与野党は国内資源の活用を早めたようです。

 

2. 世界市場に供給するロシアとウクライナ 小麦

 

ロシアとウクライナは小麦の生産国でもあり、2021年この両国から輸出された小麦量は世界の小麦市場の約28%に当たる約5900万トンと言われています。

 

図1.世界の小麦市場におけるロシアとウクライナ産の割合推移

 

棒グラフの数値は両国の占める割合(%)

 例:2019年29.4パーセント

   2020年28.6 パーセント

 2021年:

 ウクライナの小麦輸出量2400万トン

 ロシアの小麦輸出量3500万トン

  ・・・・・参考・・・・

 日本の小麦輸入量約500万トン、

 生産量約90万トン

 

図2農産品価格推移(FAO*95品目を基に試算)

 図2の解説、2020年5月から2022年3月の間における農産品価格は46%上昇した。

  *FAO: Food and Agriculture Organization of the United Nations

       (出典:図1.2ともJyllands-Posten mandag den 7. marts 2022 s.14)

 

欧州諸国及び西洋諸国はロシアのウクライナ侵攻への経済制裁としてロシアとの取引を全て中止しました。この結果はロシアの小麦も市場に出回らないということです。このことは、この秋口から世界の小麦価格が急騰することが考えられ、特に年間約5百万トンもの小麦を輸入する日本においては円安と共に物価高が進むことを筆者は懸念しています。

 

3.デンマークのコロナ感染問題下での貿易収支について

 

図3はデンマークのコロナ感染問題下での貿易収支の推移です。上の線が輸出で下の線が輸入です。1四半期毎に表した数値で単位は百万クローネです。2019年第3四半期から2021年第4四半期までの輸出入額の推移ですが、この間デンマークの貿易収支は出超(輸出額が輸入額を上回る)となっています。これを可能にしている理由の一つに、デンマークはエネルギーと食糧の自給をしていることだと思っています。

図3.

(出典:Danmarks Statistik