デンマークから風のがっこう便り2021年夏

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東京オリンピック開催まで残り僅かとなりましたが、梅雨が明け、猛暑の日々を迎えることになると思いますが、暑中見舞いを申しあげます。

 

①     デンマークの夏休みと気温について

デンマークの学校(小学校から大学)の夏休みは、6月下旬から8月上旬まで(但し大学は9月上旬)となっています。サラリーマンの人たちの多くは7月12日から3週間の休みを取っています。そのことで多くの職場は閉鎖するため、不便をきたすこともありますが、夏休みを取ることはデンマーク人にとっては当然の権利であるので、休みが明ける8月上旬まで待つしか方法は無いです。例えば筆者の場合、会計事務所に相談したい懸案がありますが、8月2日(月)まで待たざるを得ないということです。

今年の夏休みはコロナ感染問題が収束していないので、国外旅行は控えている人たちが多く、それでも南の国に出かけている人たちもおり、結果としてコロナ感染者となって帰国している人もいるようです。

今年のデンマーク気候は、5月は雨降りで気温が上がらず、どんな夏になるか懸念されていたところですが、6月に入り、通常年に比べ5度も高い気温となり、7月に入っても例年に比べ、高い気温を維持しています。

デンマークの通常年(点線)に対し2021年6月気温推移

 

デンマークの通常年(点線)に対し2021年7月15日までの気温推移

気温が平常年に比べ高くなっていることから、集中豪雨になる可能性が多くあり、その対策として、雨水と汚水を分けて処理するための、新たな配管工事が至るところで行われています。昨年の「風のがっこう便り」で触れましたが筆者が居住する田舎町でも2000年の秋から同工事に入り現在も工事中ですが終わるまでの工事期間は3年間と見ています。

集中豪雨はデンマーク以外でも発生しており、今年7月中旬ドイツの西北部、オランダそしてベルギーにおいて集中豪雨があったため、川の氾濫などで住宅や建もの被害、そしてそれによる死者も出ていると報道されています。今後、世界の至る所において、自然災害が発生することが懸念されるため、その対策に向けた国や行政の動きが期待されるところです。

 

②  デンマークのコロナ対策と信頼について

デンマークのコロナ感染者数は7月中旬に入り増え1000人以上の感染が確認されています。一方7月16日時点での入院者数は前日より4人増え51人となっています。デンマークの病院のコロナ感染者の入院可能なベッド数は800人であることから、今の所、問題はないとしています。デンマークの2021年7月16日現在における、コロナワクチン接種者率(2回の接種を受け、接種を終えた人たちの割合)は全人口の41.9%となっています。また、一回のワクチン接種を受けた人の数は3,772,099人で人口比で64.5%となっています。デンマークでは一日当たり約9万人の人たちがワクチン接種を受けていますが、殆どは政府・行政が作成したワクチンカレンダーにもとづいたワクチン接種を受けています。

デンマーク人は他の国に比べ政治・行政に対する「信頼」が多いためか、ワクチン接種を拒否する人の数は少ないと言われています。つまり国や、行政の取り組む施策を信じることの結果として、コロナワクチン接種を受ける人が殆どであると言わてれています。

国や行政への「信頼」の結果はミンクの焼却処分(HP原稿2021年5月17日参照)についても語ることが出来ます。ミンクの焼却処分は計画より約2週間遅れましたが、それでも7月12日に燃料として全部処分されました。

デンマークのワクチン接種率に対して、他の国のそれについて新聞とインターネット情報で見ますと次の通りです。

欧州連合諸国におけるワクチン接種率について、2021年7月14日付け新聞報道によりますと*平均54.13%に対し、ギリシャとフランスにおいてはワクチン接種を終えた人の割合は両国とも40%、一回のワクチン接種を終えた人の割合はギリシャで50.5%、フランスで52.5%と報じられていました。*Onsdag den 14.juli 2021, Kristeligt Dagblad

インターネット情報による2021年7月14日時点における世界全体のワクチンの接種状況では、12.7%の人たちが2回の接種を受けワクチン接種を終え、その中で日本に関しては、2回の接種を受けた人の数は全人口20.4%と報じていました。オリンピックを迎える国の国民として、接種者数は少なすぎるように思います。

民主主義国家を営む国において、コロナワクチン接種を受ける人の割合が、国民全体の9割を求めるためには、国民の政治や行政に対する信頼が必要であると語られています。フランスやギリシャにおいては医療機関に勤務する人たちのワクチン接種を強制し、それに応じない人たちには給料の支払いは停止することも検討していると語られています。

 

③ デンマーク最大の洋上ウインドファームについて

2012年デンマークの議会で多数決により決めた建設計画から約10年過ぎた、2021年6月5日予定より早く72基の風車の設置工事が終わりました。この後テスト認可手続きなどを行い、秋口には竣工式ができると発表しています。

 

洋上ウインドファーム名:Kriegers Flak

設置場所:バルト海でデンマークの海岸から15~40㎞の海上

ウインドファームの面積:132㎞2、海底ケーブル距離(長さ)170㎞

設備量:604MW(604,000kW)機種:Siemens Gamesa 8.4 MW

羽根の突端までの高さ:188m、基礎の重量:約800トン/基

見込み発電量:60万世帯分*に当たる電力約26.5億kWh. 

* デンマークの一世帯当たり(4人家族)の年間電力消費量は約4.500kWh.

 

所有者:スウエーデンの国営電力会社 Vattenfall

工事費:入札価格キロワット時当たり20年間37.2オーレ(約6.4円)

 Kriegers Flak

デンマークが世界に先駆け洋上に450kW, 11基のウインドファームを建設したのが1991年、このウインドファームは2017年3月解体処分され、無くなりました。図1で見る通り、今日(2021年7月)デンマークの海域14か所に洋上ウインドファームが建設されています。14か所の洋上ウインドファームの総設備量は170万kWで、規模の大きいのは13番(約40万kW)と15番(40万6千kW)です。これに、この秋からKriegers Flak 洋上ウインドファーム60万4千kWが加わるので、デンマークの洋上ウインドファームの総設備量は約230万KWとなります。このことで、デンマーク政府・議会が目標に掲げていた2020年までに電力消費量*の50%は風力発電で供給するという目標は1年遅れで達成できそうです。

* デンマークの年間電力消費量(2021年2月時点)約352億6,800万kWh, 同時点における風力発電の発電量約148億8,670万kWh、風力発電の占める割合42.2%。

図1.デンマークの洋上ウインドファーム

   所在地 赤字1解体(2017年3月)

 

日本でも洋上ウインドファームの建設工事が始まっている様子ですが、陸上に比べ建設費が数倍も高くなり、国民負担が大きくなるだけに、風力発電機の導入では陸上や海岸線を対象にした計画を優先することが、まず必要だと思っています。

2021年7月18日

デンマーク。ウアンホイにて

ケンジ ステファン スズキ